「開業」というキャリア ~開業医のリアルに迫る~

全5回にわたって「開業に関する理想と現実」、「後継者問題、第三者承継の状況」「遠隔診療に対する意識」について、アンケート結果とともに読み解いていきます。

第4回【開業希望の勤務医692人に聞いた】立地や建物、機器に対するこだわりは?

2018年09月11日
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 昨年、日経メディカル Onlineに登録する医師会員に対して行った「開業と承継に関するアンケート」をもとに、全5回にわたって「開業に関する理想と現実」や、昨今ニュースで話題の「後継者の問題」「第三者承継の状況」「遠隔診療に対する意識」について、アンケート結果とともに読み解いていきます。

日経メディカルキャリアの松田です。本連載も4回目。今回は開業準備中の勤務医にフォーカスし、「開業のこだわり」をテーマにお届けします。

 厚生労働省の発表によると、日本の医師数は30万4759人で、その内、大学病院勤務医が5万5187人、大学以外の病院勤務医が14万7115人、診療所勤務医が10万2457人でした。また、同省が実施している「医療施設動態調査」によると、2018年4月末時点での診療所数は10万1959件あり、約3人に1人の医師は「開業」というキャリアを選んでいます。そこで今回は、現在医療機関に勤務医としてお勤めで、将来的に開業を視野に入れている開業予備軍の先生方が持つ、開業にまつわるさまざまな“こだわり”を調査してみました。

「立地」のこだわり:絶対数では「通勤重視」と「診療圏重視」、家族・地域の影響も?!

 「開業と承継に関するアンケート」で、開業希望の勤務医に対し「立地」に関するこだわりを質問したところ、もっとも多かったのは「未定」と「こだわり無し」という回答でした。それ以外の回答では「自宅からの通勤重視」がトップで、次いで「駅近くや医療モール等患者の来院の便優先(いわゆる診療圏)」が続き、「土地の広さ、駐車場優先」「親からの承継予定」「周辺住民の質優先」「親、親族以外から承継予定」という結果になりました。

 年代別では、20代は「通勤の便」にはこだわりがないようですが、30代から上の世代で「通勤」に対する希望割合が高くなっています。また「駅近く」や「周辺住民の質」という診療圏に対するこだわりは30代以降で増え、逆に「こだわり無し」が減っているため、年代が高くなるにつれ、より具体的に「立地」がイメージ出来ていると言えるでしょう。

(グラフ1)グラフ1 【立地】こだわり質問(実数)
(グラフ2)グラフ2 【立地】年代別

 さらに「立地」に関するこだわりを開業希望エリア別に見ると、東北、北陸甲信越など、地方エリアの希望者は「土地の広さ、駐車場」を顕著に意識していました。ただ、北海道は地方ではあるものの、おそらく開業希望エリアが公共交通の便が良い札幌圏に集中しているためか「土地の広さ、駐車場」へのこだわりは全国平均並で、それよりは「集患など来院の便」の意識が高いという結果でした。また、「自宅からの通勤」は各エリアで高い比率で推移しているものの、北関東と東海はもともとが車社会のためか「自宅からの通勤」に対するこだわりは顕著に低いという結果でした

(グラフ3)グラフ3 開業希望エリア別 立地のこだわり

「建物」のこだわり:新築を検討できるのは40代以降、承継希望の割合はテナント(賃貸)と同水準

 「建物」に関する設問でも、やはり総数では「未定」と「こだわり無し」という回答が多かったです。具体的な回答の中では「新築希望」が約10%に対し「テナント(賃貸)希望」が約15%と、総数では新築希望よりテナント希望の方が多いという結果でした。また「承継希望」も11%あり、「親親族以外から引き継ぐ予定(2.5%)」を含めると約14%と、承継関連の希望が「テナント(賃貸)」」に次ぐ票数となり、「新築」よりも承継関連の方が注目度が高いという結果になりました。

(グラフ4)グラフ4 【建物】こだわり質問(実数)

 年代別に見ると「テナント(賃貸)希望」は一定の割合でいましたが、「承継希望」は30代以降で、「新築」は生活に余裕の出る40代以降で伸びる結果となり、資金や家族形態によりこだわり条件が変化しているようです。逆に、「親または親族から引き継ぐ予定」の比率が年代が上がるにつれ低くなるのは、希望者が減るわけではなく、そもそも親が開業医以外の人は承継できないため対象者は既に一定であり、それ以外の希望者の実数が年代が上がり開業が具体化するにつれ増加するためだと考えられます。

(グラフ5)グラフ5 【建物】年代別

「検査機器」のこだわり:購入よりリースを希望、新品か中古は機械の種類による

 「検査機器」に関する設問では、主に「新品か中古」「購入かリース」という選択肢に対して年代による差は少なく、おおむね「新品×リース」もしくは「中古×リース」を希望するという結果になりました。強いて言えば、まだ知識の少ない若い20代と資金に余裕のある60代で購入希望の比率が高いという結果になりました。

 そもそも、「新品か中古」「購入かリース」という選択に関しては、一概にどちらが正しいということができず、開業のコンセプトとも通じる主要な機器に関しては新品で揃え、それ以外であれば出物があれば中古も検討という先生も多いです。また、現在の低金利時代では融資によって開業資金を準備しやすく、購入しても大きな負担ではないかも知れませんが、機器の更新時期の費用や保険、サポート費用などではリースでの導入の方がメリットがある場合もあり、更新も考えた長期的な検討が必要だといえるでしょう。

(グラフ6)グラフ6 【検査機器】こだわり質問(実数)
(グラフ7)グラフ7 【検査機器】年代別

大切なのは「長期的な視点」

 以上のように、勤務医の開業に対しての「立地」「建物」「検査機器」等のこだわりに関する希望条件は、年代や地域、家族構成、資金計画などにより多岐に渡り、その人それぞれに最適な選択肢があるため、一概に正解というものはありません。また、開業して経営をしていく中で正解が変化する場合も多いです。そのため、開業にあたってはいくつかの選択肢を比較検討することはもとより、開業時のコンセプトに立ち戻り長期的な視点で考えて行くことが必要です。

 次回は、いよいよ最終回!!
昨今話題となっている「遠隔診療」に関する医師の意識を読み解いていきます。お楽しみに!

※実際の質問:

●実際に開業する場合、【立地】に関するご希望で当てはまるものを1つお選びください。
  • 1:親または親族の診療所を引き継ぐ予定
  • 2:親または親族の診療所以外の、既に開業予定の場所(土地)がある
  • 3:自宅からの通勤を考えた立地にしたい
  • 4:駅近くや医療モールなど、患者の来院の便を考えた立地にしたい
  • 5:文教地区や住宅地など、周辺住民の質を考えた立地にしたい
  • 6:土地の広さ、駐車場の広さを考えた立地にしたい
  • 7:まだ決まっていない
  • 8:特にこだわりはない

●実際に開業する場合、【建物】に関するご希望で当てはまるものを1つお選びください。
  • 1:親または親族の診療所を引き継ぐ予定
  • 2:親または親族の診療所以外で、既に開業予定の建物がある
  • 3:建物は新築希望(土地の有無、賃貸・購入問わず)
  • 4:テナント、医療モールなど賃貸物件への入居希望
  • 5:第三者からの承継案件希望
  • 6:まだ決まっていない
  • 7:特にこだわりはない

●実際に開業する場合、【検査機器】などのこだわりについて、当てはまるものを1つお選びください。
※「その他」を選択した場合は、右のテキスト欄に具体的にご記入ください。
  • 1:検査機器は基本的に新品で、購入したい
  • 2:検査機器は基本的に新品で、リース契約したい
  • 3:検査機器は基本的に中古で、購入したい
  • 4:検査機器は基本的に中古で、リース契約したい
  • 5:その他