「開業」というキャリア ~開業医のリアルに迫る~

全5回にわたって「開業に関する理想と現実」、「後継者問題、第三者承継の状況」「遠隔診療に対する意識」について、アンケート結果とともに読み解いていきます。

第3回【現役開業医347人に聞いた】事業or承継!?リタイア後の選択肢

2018年03月30日
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 2017年9月、日経メディカル Onlineに登録する医師会員に対して行った「開業と承継に関するアンケート」をもとに、全5回にわたって「開業に関する理想と現実」や、昨今ニュースで取り沙汰されている「後継者問題、第三者承継の状況」「遠隔診療に対する意識」について、アンケート結果とともに読み解いていきます。

日経メディカルキャリアの松田です。早いものでこの連載も3回目。今回は“リタイア後の選択肢”がテーマです。

 中小企業庁が出している2016年の「事業承継ガイドライン」によれば、日本の中小企業・小規模事業者の経営者の約4割が65歳以上であり、今後数年で代替わりを迎えると言われています。しかし、代替わりがうまく進まず、「経営を譲る後継者がいない!」というのが現在の中小企業の問題です。これは、当事者だけでなく、技術の継承やその地域の雇用の場が無くなることでもあり、大きな問題で、対岸の火事の話しではなく、日本全国の診療所で起こっていることなのです。
診療所は親子間で代替わりすることが多いと言われていますが、実際はどうなのか。早速みていきましょう。

リタイア後の診療所、「親子間承継」は第二希望?!

 アンケートで、「ご自身のリタイア後に診療所をどうしたい?」と質問したところ、最も多かったのは「後継者がいなければ自分の代で閉院する」という回答。次が「配偶者、息子、娘、親族に譲りたい」で、3番目に「第三者(※)で良いので引き継いでくれる人を探したい」が続きました。また「(親族以外の)自院の勤務医に譲りたい」は、「その他」以下の最下位でした。
※ここでいう第三者とは「子女及び、自院の勤務医以外」を指します。

(グラフ1)グラフ1 リタイア後の希望(実数)

リタイア後の希望は診療所が建てられた経緯にあり

 では、希望を開業形態別に見ていきましょう。(下記グラフ2参照)。

(グラフ2)グラフ2 リタイア後の希望(開業形態別)

 医院・診療所や住宅併用建物を「新築」「親から引き継いだ」場合は、親子承継・親族承継希望が高く、逆に「診療所を第三者から引き継いだ」「賃貸でのテナント入居者」場合では低い結果でした。
 中でも親から引き継いだ場合、「後継者がいなければ自分の代で閉める」開業医が多く、「第三者へ引き継ぐ」意志のある開業医がもっとも少ないという結果に。代々受け継いだ診療所に対する思い入れもあるでしょうし、当然の結果と言えるかもしれません。
 逆に、第三者承継で開業した場合は、「第三者への引き継ぎ」を希望する医師が全開業形態の中で最も高く、人手に渡すことも選択肢に入っていることが見て取れます。

年代別の特長は? …子女が進路を選ぶ時期に選択肢が変わる!?

 では年代別に見るとどうなるでしょうか。(グラフ3)20代~30代は「配偶者、息子、娘、親族に譲りたい」の比率が高く、40~50代では低くなり、60代以降再び高くなる。これは「後継者がいなければ自分の代で閉める」ことを20代~30代の頃には具体的に想像できないが、40代を過ぎ、子供の進路が医学部でなかった場合に、具体的に「リタイア後」を思案し始める医師が多いことが伺えます。
 また40代~70代の開業医であれば、「自分が築いた理想の医療を継続していきたい」という想いや、「施設として場所も経営状態もいいので、最終的には売りに出したい」という経済的な観点を強く持つ方もいらっしゃるでしょう。

(グラフ3)グラフ3 リタイヤ後の希望(年代別)

閉院する・しないを考える前に

 全体を通して言えることは、「後継者がいない」のであれば、閉院もやむを得ないかもしれません。しかし、これが医療過疎地域で起こると、どうなるでしょう。近隣患者・地域医療のプライマリケアの担い手がいなくなり、雇用の場もなくなります。冒頭でお話した中小企業の状況と変わらぬ未来が各地の診療所に起こり得るわけです。
 だからこそ、親族ではない「第三者」に診療所を譲渡する「第三者承継」をもっと啓蒙し、医療と雇用と経済の安定へと繋げられれば、と我々は考えています。日経メディカルキャリアをご覧頂いている医師の方に向けた新しいキャリアの提案として、「日経メディカル開業/経営サポート」を始めました。2018年初夏にグランドオープンを予定し、社会的ニーズに応えつつ、今後「第三者承継」などを含む様々な支援を行っていき、日本の医療を支える存在となっていければと考えています。

次回は、開業準備をしている勤務医にフォーカスして、「開業のこだわり」を大公開!
「立地は?」「建物は?」「検査機器は?」開業にまつわるさまざまな“こだわり”をお届けします。お楽しみに!

※実際の質問:
●ご自身がリタイアされる際、診療所はどうしたいと思っていますか?当てはまるものを1つお選びください。
※「その他」を選択した場合は、右のテキスト欄に具体的にご記入ください。
  • 1:配偶者、息子、娘、親族に譲りたい
  • 2:(親族以外の)自院の勤務医に譲りたい
  • 3:第三者で良いので引き継いでくれる人を探したい
  • 4:後継者がいなければ自分の代で閉めるつもり
  • 5:その他