「開業」というキャリア ~開業医のリアルに迫る~

全5回にわたって「開業に関する理想と現実」、「後継者問題、第三者承継の状況」「遠隔診療に対する意識」について、アンケート結果とともに読み解いていきます。

第2回【現役開業医に聞く】「失敗した!」と思った開業後の不満、後悔とは?

2018年02月07日
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 2017年9月、日経メディカル Onlineに登録する医師会員に対して行った「開業と承継に関するアンケート」をもとに、全5回にわたって「開業に関する理想と現実」や、昨今ニュースで取り沙汰されている「後継者問題、第三者承継の状況」「遠隔診療に対する意識」について、アンケート結果とともに読み解いていきます。

日経メディカルキャリアの松田です。連載2回目は「開業時の不満、後悔」をテーマにお届けします。

 医師の3人に1人が選択する「開業」の道。開業するにあたり多くの場合、数千万円の融資を受け、職員を雇用し、医療事業の経営を行います。つまり、「開業医=事業主」となり、経営状況によっては大きなリターンが期待できる反面、リスクも考えなければなりません。そこで今回のコラムでは、これから開業を考えている先生方が、できるだけ「不満や後悔の無い開業」を実現できるよう、先人たちが実際に開業して不満に思ったこと、後悔したことをまとめたいと思います。

「不満なし」を除くと、「建物」「人」が上位に

 2017年9月に実施した「開業と承継に関するアンケート」(日経メディカル Onlineの登録医師会員を対象。平均年齢56.9才、開業後の年数平均は14.6年の開業医347名による回答を集計)で、「立地や土地、建物、設備、人、取引企業、開業そのもの」で、開業後に抱える不満、後悔したことを聞きました。
その結果、意外にも「不満、後悔が無い」という回答が多かったです。これについては、回答者の属性が開業10年以上の安定した経営層が多く、「不満・後悔が無い」と回答した方が多数を占めたのでは、と考察しています。
それ以外の回答では、「建物」「人」に対する不満が多く、次いで「立地や土地」「設備」となっています。「取引企業」に対する不満は、すぐに変更できることもあるのか低い結果でした。「開業そのものが失敗・後悔」という回答もわずかに見られました。

(グラフ1)グラフ1 開業後の不満、後悔(実数)

他には、「テナントで賃料が高い(賃料への不満)」「新興住宅地で周辺住民に若者が多く集患に苦労(立地、集患への不満)」「専門分野での開業にすればよかった(開業科目への不満、後悔)」「東北の田舎に関東から戻ったら、基幹病院のレベルがあまりに低く、カルチャーショック(立地、周辺医療機関への不満)」「親族経営の難しさ(人に対する不満、後悔)」などの声があがっています(自由記載回答より)。

開業年数別にみる不満、後悔は? 5年目が一つの節目

 次に、開業年数別に開業後の不満、後悔を見ていきます(下記グラフ2参照)。開業後1年未満の不満は比較的少なく、軌道に乗り始める2~3年目から建物や立地の不満が増加しています。その後4~5年目で人に関する不満が拡大。この頃が各種不満や後悔が多く、満足度一番低い傾向が見られます。しかし、開業年数が5年を超えると、一転、満足度は上昇。改善できない点に関しては諦めもあるかもしれませんが、開業が軌道に乗ったと実感できるのは「5年目」が一つの節目と言えるでしょう。

<開業の好不調 年数別推移>
1年目軌道に乗せるまでが大変で不満を感じる暇も無い
2~3年目「患者が多くなり待合室が手狭」「エリア事情で新患が思うように増えない」など、建物や立地の不満を感じ始める
4~5年目「立ち上げスタッフと新スタッフの間が上手くいかない」、「給与制度や就業規則などのアラが目立つ」と内部の人材や雇用の問題が出る
5年目以降組織として一体感が出て、開業医自身も経験を積み、色々な問題にも対処ができるようになる
10年目前後開業医院として安定した経営ができるようになる
(グラフ2)グラフ2 開業年数別、開業後の後悔※複数回答のため、上記グラフは「回答者の○%が回答」ではなく、「各年代の全回答のうち占める割合」として傾向を見るために表示。

開業形態別にみる不満、後悔は? 思い通りの開業が出来たかどうかがカギ

 では、開業形態別にみた開業医の不満、後悔はどうでしょうか(下記グラフ3参照)。開業形態別で満足度が一番高いのは、「開業にあたり、自分で新築した(住宅併用建物)」開業医でした。確かにこだわりの建物を建て、通勤時間を考える必要も無いので、「不満、後悔は無い」という回答が最も多く、満足度が一番高いと言えます。
 逆に、「第三者から引き継いだ」開業医は、「不満、後悔は無い」という回答が全開業形態中で最も低く、「立地、建物、人、取引企業、開業そのもの」全てにおいて、不満・後悔と回答した比率は全開業形態の中で一番高いです。つまり、ローリスク、ローコストでのスタートアップが可能な反面、当初思っていたほど、自身の理想の医療や経営が出来ている人が少ないと考えられます。実際、「開業(承継開業)しなければよかった」と回答した比率が最も高かったのも「第三者から引き継いだ」開業医です。

(グラフ3)グラフ3 開業形態別、開業後の不満、後悔

大切なのは「失敗しない」ではなく、「失敗を知った上で準備する」こと

 おそらく、医療だけでなく、経営も学んだ経験のある先生は少ないと思います。「開業=医療業を営む中小企業の経営者になること」であり、満足の行く理想の医療と経営を続けるのは並大抵のことではありません。初めての経験でまったく不満や後悔の無い開業は難しいかもしれません。しかし、先人の失敗を見て学び、しっかりと情報収集することで、リスクを軽減や早めに備えることは可能です。
 「とは言え、やっぱり失敗は避けたい…」と言う先生は、第三者承継やテナント物件で開業医のキャリアをスタートし、ある程度軌道に乗った段階で近くに新築・移転、希望の立地、希望の建物間取りで理想の医療を追求するという「2段階開業」の道もあります。
 開業の形は様々なので様々な選択肢の中から、先生ご自身の「納得のいく開業」を叶えていただければと思います。

次回は、開業医退職後の「希望のリタイアライフ」を探っていきたいと思います。ぜひお楽しみに!

※実際の質問:
●開業後、診療所を運営するにあたりご不満、または後悔したと思われていることはありますか。下記のうち当てはまるものを【いくつでも】お選びください。※「その他」を選択した場合は、右のテキスト欄に具体的にご記入ください。
  • 1:不満、後悔は無い(思い通りの開業、経営ができている)
  • 2:立地や土地の不満(駅からの距離、駐車場をもっと広く取ればよかったなど)
  • 3:建物の不満(待合室の広さ、患者様と看護師の導線など診療所の間取りや構造など)
  • 4:設備の不満(電子カルテやシステム、検査機器の選択を誤ったなど)
  • 5:人に関する不満(採用や人材育成など)
  • 6:取引企業に関する不満(税理士、薬品卸、医療機器営業マンなど)
  • 7:開業そのものをしなければよかった
  • 8:その他