「開業」というキャリア ~開業医のリアルに迫る~

全5回にわたって「開業に関する理想と現実」、「後継者問題、第三者承継の状況」「遠隔診療に対する意識」について、アンケート結果とともに読み解いていきます。

第1回【現役開業医347人が回答】承継?!新築?!開業の最新トレンドとは?

2017年12月22日
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 2017年9月、日経メディカル Onlineに登録する医師会員に対して行った「開業と承継に関するアンケート」をもとに、全5回にわたって「開業に関する理想と現実」や、昨今ニュースで取り沙汰されている「後継者問題、第三者承継の状況」「遠隔診療に対する意識」について、アンケート結果とともに読み解いていきます。

初めまして。日経メディカルキャリアの松田です。これまで医療系人材会社で11年、転職や開業、第三者承継などを通じた医師のキャリア支援に従事してきました。今回、日経メディカルキャリアと連動した「開業と診療所経営に関する情報サイト」を企画しており、その過程で実施したアンケート結果を元にレポートしていきます。

 先生は、「開業したい」と考えたことがあるでしょうか?ご自身で考えたことがなくても、周りで開業した方がいる、または「開業したいんだよねー」という話を聞いたことがある、という経験をお持ちではないでしょうか。今まさに「開業」を検討されている先生もいらっしゃるかもしれません。ただ、「開業」と一言で言っても、その道のりは決して容易ではなく、なかなか一歩踏み出せないという先生も多いでしょう。

この連載では、「開業」の実態が知りたいという先生方へ、現役開業医のリアルな声をお届けしていきます。

迷いがちな物件探し、「開業形態」の選択肢は?

 「開業と承継に関するアンケート」(日経メディカル Onlineの登録医師会員を対象に平成29年9月19日から2日間実施。平均年齢56.9才、開業後の年数平均は14.6年の開業医347名による回答を集計)によると、建物の形態として最も多かったのが、「開業にあたり、自分で新築した(医院・診療所単独建物)」という回答でした。次いで「親から引き継いだ」「医療モール、テナントなど賃貸物件に入居した」が多数を占めています。しかし、開業3年未満の「最近開業した医師」に絞ってみると、「新築(医療診療所・単独建物)」「親からの継承物件」「医療モール、テナントなど賃貸物件」が横並び、そして「第3者承継」の割合が多くなっています。

(グラフ1)グラフ1 開業形態

30代は親からの継承が多く、40代は第三者承継が視野に

 年代別で見ると(グラフ2参照)、30代は「親から引き継ぐ」「自分で新築(医院・診療所単独物件)」「医療モール、テナントなど賃貸入居」が上位を占め、40代になると「自分で新築した(住宅併用建物)」の割合が増えていました。これは、医師としてキャリアを重ね、ライフスタイルの変化や開業資金の余裕などが生まれたことによる差が1つの要因と考えられます。また、40代以降は、第三者から引き継ぐ「第三者承継」も選択肢の1つとなっています。身内ではない人から引き継ぐため、「抵抗がある」という先生もいらっしゃるようですが、施設だけではなく「その診療所が抱えていた患者も引き継げる」という点が大きなメリットとして注目されています。

(グラフ2)グラフ2 各年代別開業形態

物件選びを左右する、「経済市況」と「建築コスト」

 では、物件選びは「現在のキャリア」や「開業後の経営リスク」だけを基準にすれば良いのでしょうか?開業後の経年数別の開業形態を見ると(グラフ3参照)、開業時の経済市況や建築コストなどにより新築・テナントの比率が上下するという結果が見て取れます。
 特に開業して「5年以上、10年未満」の場合、開業当初リーマンショックから東日本大震が起こるなど、市況も悪く建築コストがUPしたことから、新築での開業医師の割合が減少しています。一方「3年以上、5年未満」は、アベノミクスによるゼロ金利政策など建築に有利な条件が揃っていたため、新築比率がアップしています。この結果から、開業する際に市況で注意しなければならないのは「金利」「建築コスト」と言えます。特に「金利」は、テナントで入居する場合においても内装・設備費として医療機器とは別に数百~2000万円程度かかるため借入資金で賄う先生が多く、開業時の重要なポイントのひとつになります。どこからいくら借りるのか、また毎月いくらずついつまでに返すのか、開業後の運転資金や経営にも大きく関わってくるので、ぜひ専門家によるシミュレーションをお勧めします。

(グラフ3)グラフ3 開業後の年代別、開業形態

これからが旬!「第三者承継」という選択肢

 近年では、医院・診療所の後継者不足が顕在化しており、医師の世界でも「第三者承継」がトレンドとなっています。アンケート結果からも、開業した「1年以上、3年未満」医師の、5人に1人が「第三者から引き継いだ」という回答があり、開業の選択肢との1つとして認識されています。
 特に現在は、医師偏在の地域格差がさらに広がり、新規開業エリアとしては都心部、周辺部での開業増加が予想されます。つまり、戦略的に「競合医院のいない診療圏」を確保しづらくなってきています。もちろん今後も一定比率の親子間承継は残りますが、急増している後継者不在の診療所を引き継ぐ「第三者承継」による開業比率が高くなっていくことでしょう。

次回は、「実際に開業してみたら、○○が不満だった!」という現役開業医の生の声をお届けします。ぜひお楽しみに!

【第三者承継とは?】

親が子や親族に、もしくは院長が現在の勤務医に事業を譲渡(相続)するのではなく、第三者に対し事業を有償無償で譲渡することを言います。

※実際のアンケートでの質問文:
●現在開業の建物はどのような形態ですか。当てはまるものを1つお選びください。※「その他」を選択した場合は、右のテキスト欄に具体的にご記入ください。
  • 1:開業にあたり、自分で新築した(医院・診療所単独建物)
  • 2:開業にあたり、自分で新築した(住宅併用建物)
  • 3:親から引き継いだ
  • 4:第三者から引き継いだ
  • 5:医療モール、テナントなど賃貸物件に入居した
  • 6:その他