開業はじめてものがたり

このものがたりは、とある大学病院に勤めていた皮膚科専門医が、ふとしたことから開業を志し、周りの人に助けられつつ悪戦苦闘しながら開業するまで。そして開業してからの様子を、時には感情的に、時には客観的に分析しながら綴った開業体験記です。もともとはタスク管理や備忘録的に始めた雑記でしたが、情報過多の昨今、開業準備の過程で迷う特に女医さんの背中を押すことができればと、ものがたり化しております。乱筆乱文ではありますが、ご愛顧いただければ幸いです。

第6回 開業はあらゆることが同時並行で進む(1) ~まずは内装工事から~

2019/01/11 港 ひふみ
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開業はあらゆることが同時並行で進む

 何よりも重要といわれていた「場所」は決まりました。ここからは様々なことを同時並行で進めていきます。開業に関する情報を調べていくと「物件選びのこと」「内装工事のこと」「機器・備品のこと」「資金調達のこと」「採用のこと」と、場所・モノ・おカネ・ヒトなどのテーマごとに進め方やポイントが記されていると思います。私もそうやってテーマごとに順番に考えていけば良いと思っていましたが、実際はそうではありませんでした!

 私の場合、最初に「物件」を決めましたが、そのあとの「内装工事」と「資金調達」については状況が時々刻々と変化するなかで、並行して考える必要があったのです。今回から数回にわたって、同時並行で進めた開業準備を、なるべく具体的にわかりやすく説明していこうと思います。

資金調達と内装工事に注力してみた

 物件を決めたのが年明け早々。開業に向けて大まかなスケジュールを描いていましたが、なかでも時間が掛かると見込んでいたのが「内装工事」と「資金調達」です。今回見つけた物件は元々オフィスとして使われていましたから、私の目指す皮膚科クリニックのカタチに変えていく必要があります。その「内装工事」にはきっと時間と費用が掛かると素人ながらに思ったからです。

 もう一つが「資金調達」です。内装工事や医療機器の調達、人件費などを足し合わせると、開業時に準備しておくべき額は数千万円になります。当然、金融機関に協力してもらう必要がありますが、これまで私も夫も大きなお金を借りた経験はなかったので、お金を借りるということがどういうことなのか、そもそも何千万ものお金を貸してもらえるものなのか、よくわかりませんでした。

まずは、内装工事の事業者選びについて振り返ります。

内装工事の事業者選び

 内装工事は、大きく図面を描く「設計」と、図面に基づいて工事をする「施工」に分かれます。「設計施工一括」で依頼できる事業者もいるので1社に依頼することも、「設計者」と「施工者」を分けて別々の事業者に依頼することもできます。知り合いやコンサルタントの方にご紹介頂き、複数の事業者の方にお話をお伺いしましたが、「設計施工一括」の事業者の方はだいたい「ビル内なら設計を始めてから2カ月で開院できますよ、かかっても3カ月あれば」と言います。一方で「設計者」の方にお聞きすると、「開院するのは5カ月後ですね」と言います。事業者によってスケジュール感がそんなに違うの!?と大変驚きました。

 確かに「設計施工一括」なら1社で賄うので連携もスムーズで工期は短くなります。開業時期が明確に決まっていて、いち早く開業することを優先する場合には、「設計施工一括」の事業者を選んだ方が良いかもしれません。思わず、「何でそんなに早いんですか?」と聞くと、慣れているから、とか、色々な物の在庫を調整するから、と返されました。しかし、今回お会いした事業者の方と話していると何となく焦らされているような気持ちになりました。一生使うかもしれないクリニックです、カラ家賃が発生するとはいえ、焦って悔いの残るようなことはしたくないと思いました。

 もう一つ気になることがありました。設計者と施工者が同じだと、工事内容に対するチェック機能(監理というそうです)が働かないのではないかと思いました。勘ぐり過ぎかもしれませんが、工事の素人の私にはきちんと工事されているのか判断することができないと不安になったのです。

 私の想いを誰よりもよく聞いてくれて図面に表現し、クリニックを一緒に実現してくれる「設計者」の方に正式に依頼をしたのは、物件を決めて2週間後のことでした。そして図面に基づいて工事を行う「施工者」については追って選ぶことにしました。

 ※ちなみに私は上記理由から「設計者」「施工者」別々に依頼しましたが、一般的に「設計施工一括」事業者に依頼するほうが費用は抑えられるようです。今回は30坪程度の内装工事だったのであまり大きな差にはなりませんでしたが、もっと広い坪数のクリニックで、開業時期や予算の制限がある場合は「設計施工一括」事業者に相談してみても良いのかもしれません。

資金調達計画に影響する内装工事の費用と期間

 内装工事の事業者として「設計者」を選ぶところまでを振り返りましたが、実は並行して資金調達に向けた「金融機関選び」も進めていました。ところが、こちらは非常に調整に時間が掛かりました。なぜなら内装工事の計画が資金調達に大きく影響するからです。

 最初に、設計と施工にかかる時間と開業時期について事業者によって「2カ月後」から「5カ月後」と複数の意見がありました。これだけで3カ月開院時期が変わりますが、スケジュールが変わるため必然的に金融機関に提出する事業計画書の内容も変わります。そして内装工事の仕様、設置する医療機器や家具の種類によって金額も増減します。

つまり、
 「どんなクリニックにするか」
 「どれだけ費用をかけるのか」
 「どれだけお金を借りるのか」
 「どのように(どれくらいの時間をかけて)お金を返済していくか」
このあたりを渾然一体に考えていく必要があったのです。

次回は、悩みながら進めた金融機関選びについてお伝えします。

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著者プロフィール

皮膚科専門医 港 ひふみ(みなと ひふみ)氏

●国立大学医学部卒業後、大学病院皮膚科などに勤務していましたが、最近開業医へ転身した一児の母。
両親や家族が開業医をしていたわけでもなく、強い開業医志向を持っていたわけでもない一人の勤務医が、 日々一喜一憂しながら、地域の皆様に愛されるかかりつけクリニックを目指して奮闘する姿をお伝えします。