開業はじめてものがたり

このものがたりは、とある大学病院に勤めていた皮膚科専門医が、ふとしたことから開業を志し、周りの人に助けられつつ悪戦苦闘しながら開業するまで。そして開業してからの様子を、時には感情的に、時には客観的に分析しながら綴った開業体験記です。もともとはタスク管理や備忘録的に始めた雑記でしたが、情報過多の昨今、開業準備の過程で迷う特に女医さんの背中を押すことができればと、ものがたり化しております。乱筆乱文ではありますが、ご愛顧いただければ幸いです。

第5回 不動産探しの苦労 ~やっと運命の場所見つけました~

2018/12/14 港 ひふみ
Facebookでシェア ツイート

人生かけるなら地元で

 私が開業をするのはきっとこのタイミングが最初で最後かもしれません。人生を掛けてやる自分のクリニックです。じっくり考えたときに、「私の人生を掛けてやるなら自分の地元」でやりたいと改めて思いました。顔馴染みがいる地域の商店街、週末には家族で地域のお祭りやイベントでお世話になってきました。今度は私の提供する医療で、地域に貢献できたら素敵だなと思ったのです。

家賃の考え方

 担当コンサルタントにもその旨を伝えてみました。驚かれた様子でしたが、一人の担当コンサルタントが地元地域での物件探しに協力してくれました。また、「家賃は皮膚科なら坪1万5000円まで。どんなに高くても坪2万円までに抑えた方がよい」と言います。それまで賃貸マンションを借りるように「家賃は総額」で考えていた私にとって、「坪単価」で考えるのはとても新鮮でした。ちなみに、ある書籍によると「皮膚科のクリニックは25坪くらいが望ましい」と記されていました。これで皮膚科クリニックにおける毎月の家賃は推して量ることができると思います。

物件探しの必勝法「足で稼ぐ」

 私が物件を探している時期に、地元地域で耳鼻科クリニックを開業した友人の医師に、よい物件がないか相談しました。すると「近くで皮膚科クリニックに良さそうな場所が空いているよ」と言うではないですか。慌てて見に行くと、家賃も面積も私が望む内容ですごくイイ感じ。ですが既に先約がありオフィスになるとのこと。どうやら地元地域は「人気な地域」で競争が激しいようです。そこから、私の不動産屋さんめぐりが本格化しました。時間を見つけては地元地域の物件を取り扱う不動産屋さんを回り、そして街を見て回りました。「空き物件」の看板を見つけるとすぐに電話する、そんなことを繰り返す日々が続きます。

理想の物件は簡単には見つからない

 不動産屋さんには「25坪くらいで」とお願いしたのですが、紹介されるのは15坪くらいの物件ばかり。場所柄「25坪はなかなか無い」ようで、運よく25坪あったとしても、入口の位置が悪い、エレベーターがない、建物が古い、マンションの一室、オーナーさんが厳しい、飲食店のみの雑居ビル、音がうるさい、臭いなど…。なかなか好条件の物件は見つかりません。

 何より、バリアフリーでない建物が多いことには驚きました。私たちが診たい患者さんの客層を考えても車いすやベビーカーでの移動のしやすさは重要になりますが、それが難しい物件ばかり。また図面や内見時の印象が良かったため「看板を付けたい」とオーナーさんに求めると、NGと言われたケースもありました。2階以上の場合は看板がないと地域の方々に認識してもらえませんから「看板は絶対条件」です。しかし、認めてもらえない物件も多かったです。

ついに見つけた理想の物件。実は、、、

 いつ終わるのかと思われた物件探し。どの開業医の方々もご苦労なされていることと思います。私の場合、期間はどれくらい掛かったと思いますか?

 なんと2年です。2年間探して、理想の物件にようやくたどり着いたのですが、それはなんと最初に地元地域の耳鼻科の友人が教えてくれた「先約があって諦めた」あの物件でした。つまりあの時契約した方が2年後の更新のタイミングで出られるとの情報を知り、すかさず飛び込んで契約に漕ぎ着けたのです。

 2年かけてようやくつかんだ理想の立地での開業のチャンス。開業コンサルティング会社の方々が口をそろえて言っていた「立地が大事」という言葉が改めて胸にしみてきます。と同時に「私はココでやりたい」と覚悟を決めました。

物件を探す
専門家に相談する

(つづく)

著者プロフィール

皮膚科専門医 港 ひふみ(みなと ひふみ)氏

●国立大学医学部卒業後、大学病院皮膚科などに勤務していましたが、最近開業医へ転身した一児の母。
両親や家族が開業医をしていたわけでもなく、強い開業医志向を持っていたわけでもない一人の勤務医が、 日々一喜一憂しながら、地域の皆様に愛されるかかりつけクリニックを目指して奮闘する姿をお伝えします。