開業奮戦記(目黒 瞳)

「開業のきっかけは?」「開業地域や物件を選ぶポイントは?」「開業資金は?」
「患者は来てくれる?」。理想に向かって診療所開業に踏み切った医師たちが、
日々悩み、悪戦苦闘する様子をリアルにお伝えします。

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

記事一覧

第89回 眼科には、見えない

目黒 瞳

 ある日の昼下がり、初診の患者さんが待ち合いで「問診表がよく見えなくて書けない」とスタッフに話しています。患者さんが誰もいなかったので、私が診察室から出て「今日はどうされましたか?」とお聞きしたところ、「喉が痛くってさー」と一言。

「!?あの、ここ眼科なんですが…」と返すと、「え?そうなの?うーん、せっかく来たんだから、喉診てくれない?」と頼み込んできました。申し訳ありませんが、診られません…。

第88回 近所の眼科の広告が攻めてきた!

目黒 瞳

 最近、近所にある別の眼科が急に電柱広告を増やし、それが当院のすぐ近くまで進出してきています。まさかこの連載を読んだからではないと思うのですが。そんな様子を見た母がまたメールを送ってきました。

 「広告が付いていない電柱すべてに広告を出しなさい!クリニック前の電柱が空いているじゃない。そこに広告を出せば車からも見えるようになるわよ」

 その電柱は広告を出せる電柱ではないし、勝手に看板を付けるのは違法なんだけど・・・。

第87回 開業するって親不孝?

目黒 瞳

 勤務医時代から、『日経メディカル』を含む医学系の雑誌が実家に送られてきています。私は自宅にダイレクトメールやセールスが来るのは嫌なので、卒業生名簿などのほとんどは実家の住所を書くようにしています。実家に届いた私宛ての郵便物は、両親が勝手に開封することはありません。でもその場で目を通して捨てた雑誌を、母がゴミ箱から拾って読んでいたようなのです。

第86回 開業医って自営業(当たり前ですが・・・)

目黒 瞳

 ある日、近くで会社を経営している社長さんが来院しました。
「あのっ!うちの娘が先生と同じ名前なんですっ!! 応援してます!!!」
「はあ、そうですか」と淡々とお返事する私。そして「じゃ、診察します」とあっさりかわしてしまいました。

 これを聞いた私の友人は、「そういうときはね、『ありがとうございますっ!!!』って手を握るのよ!」と力説します。なんだか政治家みたいだなあ…と私は思ったのでした。

第85回 誰も患者を紹介してくれない

目黒 瞳

 「医師会に入ると、ほかの科の先生から患者さんを紹介してもらえますよ」

 開業に当たって周りの先生からよく言われた言葉ですが、実際に入ってみると、そんなことはほとんどないようです。というのも当院の場合、近隣の内科から糖尿病患者さんの網膜症のチェックを依頼されることが全くないのです。

第84回 後医は名医というけれど

目黒 瞳

 開業して6カ月ぐらいたったころからでしょうか。近隣の眼科にかかっていた患者さんが、セカンドオピニオンを求めて当院を受診することが増えてきました。診察してみると、本当は通院する必要がないのに通院を続けていたり、診療所では手に負えない状態になっていて大学病院に紹介するケースも多く、「前の先生は今まで何をしていたのかしら…」と思ってしまいました。

第83回 「タレントと対談して記事載せませんか?」

目黒 瞳

 開業して3カ月ぐらいたったころから、セールスの電話が頻繁にかかってくるようになりました。
 よくあるのが、「銀行などの待合室に置いてある雑誌に、タレントと対談して記事を載せませんか」というものです。これは詐欺ではないようですが、金額を聞いてみるとあまりにも割高・・・。しかもそういった雑誌自体、私は見たことがありません。

第82回 検索サイトで10位以内を目指せ

目黒 瞳

 SEO対策をして、インターネットでの集患に力を入れるようになり、目標を立てました。それは、「眼科」と「●●(地名)」をキーワードにして検索したとき、結果の1ページ目に出ることです。Yahoo!もGoogleも1ページに10サイト表示されます。ちなみに同じ地区には52軒眼科があるので、そのうちの10位以内を目指したというわけです。

第81回 実は頼れる電柱広告

目黒 瞳

 新規開業すると、町内にクリニックの看板広告を出す先生が多いようです。私は開業して最初のうちは、看板広告を一切出していませんでした。最寄りの駅には出したいなと思っていたのですが、広告用スペースがものすごく巨大で、出しているのは一部上場企業がほとんどです。

第80回 ひとりぼっちの外来

目黒 瞳

 派遣スタッフを解約したり、産休に入るスタッフが出たことで気がついたことがありました。スタッフの入れ替わりがあると、「あのクリニックは院長先生が厳しくてスタッフが居着かない」と近隣でうわさされることがあるのです。

第79回 産休は突然に

目黒 瞳

 妊娠したスタッフは非常に元気で、妊娠発覚後も同じペースで仕事を続けていました。自分の母親も結婚相手の母親も出産ぎりぎりまで働き、すぐに仕事に戻ったのを知っていたため、そんなものだと思っていたそうです。

 が、36週に入ったある日のこと。産婦人科の主治医から「なんで、こんなにお腹が張っているんだろう」と言われ、「通勤の時には結構張りますね」と答えたところ、「ええっ!! まだ仕事しているの? 35週に入ったら里帰り出産の人は実家に帰るし、普通仕事はしないでしょう?!」と驚かれたそう。あまりにのんきな雇い主と思われそうですが、産前の休みは義務ではないので、主治医から見て休んだほうが良いときは言ってもらわないと、本人は分からないのです…。

第78回 保育園に入れるには

目黒 瞳

 常勤スタッフから妊娠を告げられたあと(第64話リンク)、クリニックの近くにある保育園に預けられるのか一緒に調べてみました。

 スタッフは違う自治体から通ってきています。話には聞いていましたが、公立の保育園に入るのはまず無理なんですね。「税金で運営している関係上、地域の住人が優先です」と言われてしまいました。私なら今までこの地域に税金納めてるんだけどなあ。いっそのこと私の子供にしまいたい…と思ったりしました。保育園では「毎年4月には空きが出て、そのときに出産後57日を経過していれば最優先です。保育園に入りやすい誕生日がありますよ」とも言われました。

第77回 院長のブログ

目黒 瞳

 前回に引き続き、SEO対策のお話です。

 「地名」や「駅名」、「眼科」といった検索のキーワードで、診療所のホームページが上位に来るように、ホームページからのリンクを貼ったブログを書くよう、SEO対策をしてくれているK君に勧められました。「更新は毎日しなくてもいいので、診療内容に関したことを書くといいですよ。あと、毎回、クリニック名とホームページへリンクを貼っておくのが効果的です」とK君。

第76回 駅名が付いたクリニック名は有利

目黒 瞳

 実はSEO対策(第75話にリンク)を始めるまで、クリニックの名称が重要とは全く気付きませんでした。ちなみに当院は私の名前を冠しただけのシンプルなものです。

 私の診療所がある地域は町の名前よりも駅名が有名で、駅名が付いた眼科が既に存在していました。この地域で眼科を受診しようとする人は、おそらくインターネットで最初に駅名で検索すると思うので、当院にとってはかなり不利です。

第75回 「先生、SEO対策はされていますか?」

目黒 瞳

 「目黒先生、SEO対策はどうされているんですか?」バイト先のスタッフのK君が、お昼休みに突然聞いてきました。

 「?」という顔をする私に、「先生のクリニックのホームページ、確かにきれいにできているけど、これじゃああまりアクセスは増えないなと思ったんです」とK君。

第74回 悩んでいたとき助けになった本

目黒 瞳

 貯金が減っていく通帳を見ながら悩んでいたある日のことです。

 診療所開業の助けになるような本は、実はあまりありません。『診療所集患マニュアル』(日経BP社)は、正直言って「こんなこともうやっているよ」という内容ばかりで、値段に見合いませんでした。(その後2010年に新しい版が出ています。)『診療所開業マニュアル』(日経BP社 2018年8月時点で完売)の方は参考になったのですが・・・。

第73回 励ましてくれた先輩開業医

目黒 瞳

 バイト先の眼科は、コンタクトレンズの処方や手術もしているので、患者数が非常に多いところです。が、やはり開院当初は一般患者さん(コンタクトレンズ処方以外の患者さん)が増えず苦労したそうです。

 バイト先の院長は、時々お昼をおごってくれて、いろんな話をしてくれます。
「オレもさあ、開業した当時は、近くの眼科が気になってのぞきに行ったよ」

第72回 休みたいけど休めない

目黒 瞳

 開業に当たって一抹の不安を感じていたのが、スタッフに給料を払えるかどうか。患者数がなかなか増えてこないこともあって、不安は募る一方でした。勤務医時代に「なんでこんなにお給料が少ないんだろう」と思ったことはありましたが、人に給料を払えないのは、それと比べ物にならないほどつらく、開業医になってみないと分からないことだと身に染みて思いました。

第71回 開業医はおちこぼれですか?

目黒 瞳

 患者数が増えない、周りのドクターにはいろいろ言われる・・・。それでも、なんとか元気を出して、自分が専門にしている分野の勉強会に行くことにしました。

 ところが、あるドクターに「え?目黒先生、来てたの?これ研究の話だよ。もう関係ないでしょ」と言われてしまいました。悪気なく言っているのが分かるだけに、非常に辛かったです。

第70回 ショックのどん底

目黒 瞳

 開業すると、自宅とクリニックの往復が主体の生活。開業時の忙しさがなくなると、ものすごい閉塞感があります。頻繁に行き交っていた業者とのメールや電話もまったくなくなり、来るのは迷惑メールばかり。そしてそれにさえ返事したくなるくらいでした。

第69回 まぶたの痙攣が止まらない・・・

目黒 瞳

 開業して数カ月目のことです。

 レセプトの枚数が少ない上に患者さんもあまり来ないので、レセプト処理は外来中に終わってしまいました。診療終了後、「おいしいものでも食べに行こう」とスタッフを連れて出かけたのですが、行きたいレストランは、近所のもう一軒の眼科の側。患者さんが大勢来ているか気になるので、その辺りには近づきたくないのですが、行きたいレストランは結構美味しくて、私の家族も常連のお店です。

第68回 ストーカーっぽい男性患者

目黒 瞳

 薬がなくなったわけでもないし、具合が悪いわけでもないのに、たびたび受診される男性患者さん。毎回、長々とお話されていきます。

 ある日、ホームページにある私の顔写真をコピーして、周りに星やハートマークをちりばめたカードを作ってきました。私の家族の知り合いだというので、こちらから名刺をお渡ししたら「私は独身で結婚相手を探しています」というメールが来ました。

第67回 スタッフの面接では何を聞く?

目黒 瞳

 スタッフの話が続いたついでに、面接についても書きたいと思います。

 以前の職場での話です。スタッフから「トイレ掃除をしたことがありません」「ゴミの分別をしたことがなくて」「お茶を葉から入れたことがないんですが、分量は…?」と言われたことがありました。さらに、遅刻や無断欠勤が当たり前だったり、一から常識を教えないといけない人もいて、雇ってみないと分からないことが多くて困るなあと思っていました。

第66回 再考:雇うなら派遣?正社員?

目黒 瞳

 開院したとき、「目黒先生のクリニックなら3人以上のスタッフが必要だよ」と知り合いのドクターたちに言われていました。でも地域性や自分の診療スタンスを考えると、患者数が増えても必要なスタッフは2.5人と思っていました。

第65回 クビにするのはつらい

目黒 瞳

 妊娠したスタッフはクビになるのでは、と心配していたようですが、そんなことはできません。私から「勤務が続けられなくなったり、出産後に復帰が難しいようだったら、その時相談しましょう」と提案したことで、本人は安心したようです。

第64回 「妊娠しちゃいました…」

目黒 瞳

 ある日のことです。いつもおしゃべりな常勤スタッフが今日はおとなしくしています。風邪でも引いたのかなと思っていました。
 外来終了後、私がレジ金を確認していると、彼女は泣きそうになりながら、「…、先生、ほんとにごめんなさい。妊娠しちゃいました…」と一言。

第63回 診療所が寒い!

目黒 瞳

 近隣の開業医の先生たちに年賀状を出してみたところ、「1年目がつらい時。がんばってください。」とお返事をいただきました。ありがとうございます。
 眼科の先輩開業医からは、「石(医師)の上にも3年とこちらの医師会ではよく言います。」とあり、「そうか3年かあ」と思っていたところ、

第62回 「王様の耳はロバの耳」と叫びたい!

目黒 瞳

 開業直前は忙しいのですが、開業してから患者さんが来ず、待ち時間だけが長い時期って、変に疲れるし、寂しい時期です。「誰かと話したーい」という気持ちになります。開業したばかりのドクターが知り合いにいたら、ご飯や飲みに誘ってあげてください。

第61回 誰かに認められたい

目黒 瞳

 患者数の増加はものすごいスローペースなのですが、近隣で開業されていたH先生の患者さんが1日に1人は受診されます。H先生が廃業されてから1年ほどになりますが、患者さんの多くは他の眼科に行くことなく過ごしていたそうです。

第60回 つらい日々の中でも

目黒 瞳

 「医者っていうだけで、すごいと思うような人たちが相手なのよ。あんたがいくら専門とか言ったって、みんな分かりゃしないんだから。『理想の医療』なんて言ってないで、どんどん検査して薬出して、もうけを出さなきゃ、つぶれるわよ」。患者さんが増えない状況を母に責められます。

第59回 増えない患者、減る貯金

目黒 瞳

 開院日こそ盛況だったものの、その後はさっぱりです。あまりに空いていて、クリニック前に路上駐車してハザードランプを点滅させたまま、診察を受ける患者さんまで出る始末。多いのは患者さんよりも営業さんという日が続きます。

第58回 とっても待つ診療所?

目黒 瞳

 商店街の世話好きのTさんが「チラシができたらくださいね」と言うので、新聞折り込み用に刷ったチラシを渡しました。すると、雨に濡れても大丈夫なようにビニールでカバーをかけてポスターのようにしてくれ、商店街のいたるところに貼ってくれました。

第57回 派遣スタッフの健診は?

目黒 瞳

 スタッフの1人は派遣なのですが、派遣元の会社から「勤務時間が少ないために健康診断は会社ではできません」と連絡がありました。「労働基準法がどうこうと言う以前に、健康診断を受けていない人が医療機関で働くって、まずくないですか?」と言ってはみたのですが、「受ける必要があるなら、本人負担か、そちらで払ってください」と、にべもありません。

第56回 初めての給料

目黒 瞳

 常勤スタッフが1人しかいないので、給料の計算は大変ではありません。社会保険労務士の方に教えてもらった給与台帳への記載も、まだ“ままごと”のような感覚なのですが、スタッフに給与明細を渡すときは、なんだか嬉しかったです。

 スタッフがくれた一言が、
 「催促しなくても、お給料日にちゃんともらえるなんて、うれしいです」

第55回 いつになったら医師会員?

目黒 瞳

 生活保護の方の診療を行うための手続きは、社会保険事務所で保険医療機関の認可が下りて指定通知書が来なければ、できません。速攻で手続きはしたのですが、最初の月は結局間に合いませんでした。もっとも、生活保護は「遡及手続き」で、さかのぼっての申請が可能ですので、焦る必要はあまりないのですが。

第54回 電子カルテ、その後(3)電子カルテのカスタマイズ

目黒 瞳

 「検索ができるので電子カルテにした」と以前に書きましたが、不足金の記録や日報・月報の処理が非常に楽です。レセコンを使っている施設の中には、スタッフがレセプトの点数を手書きで月ごとに表にしているところもありました。院長としてレセコンを使ってみたことはないので正確な比較はできませんが、経営管理の面でも電子カルテは使えるのではないかと思います。経理を見てもらっている会計事務所は複数のクリニックを顧客に持っていますが、「お金の動きが分かりやすい」と言われました。

第53回 電子カルテ、その後(2)算定されてない!

目黒 瞳

 プリントされたレセプトを見て判明した「衝撃の事実」第2弾は、セット入力のミスでした。開院前に頼んでおいたセットが間違って組まれていて、算定できるはずの点数が算定されていません。電子カルテの画面上では検査項目が出ていたので気付かなかったのですが、項目が字面として出るだけで点数は加算されていなかったのです。

第52回 電子カルテ その後(1)初レセプト

目黒 瞳

 開院して初のレセプト作成時期。しかし、電子カルテの会社からは「レセプトは手伝いません」と告げられ、結構衝撃でした(そこまで確認しなかったのも、のんきなものですが…)。

 「契約時には『レセプト立ち会い』と言っていたのに…」と思ったのですが、これはレセプトの用紙と社会保険の総括表、国保提出に関連する書類がきちんと印刷できるかの立ち会いという意味。提出できるように書類を作るということではないそうです

第51回 内装のちょっとした後悔

目黒 瞳

 いろいろとトラブった末の内装ですが、実際に診療を始めると、やっぱり「こうしておいた方が良かった」という部分が出てきます。そんなちょっとした後悔をいくつか。

第50回 女医の利、地の利

目黒 瞳

 開業して意外に思ったのが「女医さんだから来てみた」と言われることです。私の出身大学は当時でも女性が3割ほど在籍していたので、女の医者が珍しいという感覚はありません(祖母も医者だし)。

 でも考えてみれば、近隣の開業医で私以外の女性院長はもう一人いるだけです。私は今まで、女医ということでイヤな思いをしたことは幸いなことに全くなく、その上、開業では非常に有利なのかしら?と思いました。

第49回 開院日!

目黒 瞳

 いよいよ開院の日。スタッフも私も落ち着かず、早々と出勤してしまいました。「誰も来ないのでは? 良くて10人くらい?」とドキドキしていたのですが、ふたを開けてみると、地元商店街の方が次々と来てくださいました。結局、初日の受診は20人以上。かなり大変な日となりました。

第48回 内覧会はいつ開く?

目黒 瞳

 開業前にクリニックを見てもらうという「内覧会」は最近ではごく普通のことになりました。内覧会のお知らせの折り込み広告を新聞に入れるのはほぼ唯一の広域宣伝の機会。地域の特性を考えて、行う時期を決めるのがよいでしょう。

 お世話になったドクターたちに来てもらうためにと、日曜に内覧会を行うクリニックが多いようです。ただ、日曜休診なのに日曜に行っても、本来外来に来てくれそうな近所の方たちの流れに逆らうような気がします。

第47回 医師会不要論

目黒 瞳

 開業するということで医師会に入ることに。眼科専門医の規定には「眼科医会に所属すること」とあり、そして眼科医会の規定には「開業医は医師会に入らなければならない」とあるからです。もっとも、医師会に入っていない眼科の開業医も実際いますが、専門医を剥奪されたという話は聞いたことがありません。

第46回 押さえておきたい、ツーカーの業者

目黒 瞳

 「医療機器は業者を通さずに、メーカーから直買いしたほうが安い」と思っている方がいるようですが、必ずしもそうではありません。同じ機械を欲しいと思っている施設が複数あったら、業者(販売代理店)がまとめて安く買うことが可能ですし、機器が不調の場合に代替機をすぐ持って来てくれるのは業者(販売代理店)さんです。

第45回 電子カルテいろいろ

目黒 瞳

 デモしてもらったり、バイト先で使用してみた電子カルテの印象です。

A社:入力画面が非常に使いやすく、特に眼科向けと感じました。しかし、お値段が400万円近くすることと、遠隔メンテナンスの方式がADSL推奨だったので、ひかりを導入した当院向きではないと判断。

B社:A社のデモをしてもらうときに、対抗馬としてこちらもデモしてもらいました。バイト先のクリニックにも入っていたものです。特に特色は感じませんでした。営業の人があまり内容を分かっていなさそうで、説明が下手なことがひっかかりました。結構なお値段になるようです。

第44回 あなどれない紙カルテの力

目黒 瞳

 眼科はカルテに絵が多いので、「電子カルテは無理では?」と言われることがあります。しかし、絵はペンで入力できるし、視力、眼圧、視野も眼底写真も全部取り込むことができます。ただ、「できる」ということと、使いやすさは別問題です。

 都心のクリニックではカルテの保存場所が悩みの種なので、完全ペーパーレスが可能で、カルテ保存のスペースがいらないとなれば、設計は楽になります。

第43回 クリニックの広告、意外と使えるのが…

目黒 瞳

 開業を考えたら、1回は足を運ぶであろう場所がメディプラザ(10年前当時の関東圏の開業希望医師はそうでした。現在関東は閉鎖され、福岡のみで展示をしているようです。)。電子カルテを中心として医療機関向けのIT機器を展示しているのですが、ただ行ってもしょうがありません。どんな診療体制にしたいのかをはっきり分かっていないと、物見遊山で終わってしまいます。

第42回 クリニックの広告、意外と使えるのが…

目黒 瞳

 ホームページを作ってもらったら、色のイメージや字体がそのまま使えて、新聞の折り込み広告や診察券、名刺など、安い印刷会社に頼むことができました。デザイン会社にデザインから印刷までを頼むと、かなりの高額です。

第41回 ホームページ、いくらで作る?

目黒 瞳

 私は地元に開業するので、商店街の方が進んで宣伝してくれましたが、開業に当たっては最低限、ホームページは必要だと思います。医療はいまだに口コミで患者さんが集まってくるものですが、それでも、近くの医療機関を調べる場合、あるいは知人に紹介されても受診の前に情報を収集するなど、患者さんはネットで検索をかけるからです。

第40回 派遣と正社員、どっちを雇う?

目黒 瞳

 眼科には視能訓練士(ORT)という職種があり、検査のプロである国家資格です。このORTを常勤スタッフとして雇いたいと思って、あらゆるところに声をかけたのですが、いい反応が全く返ってきません。

第39回 求む!万能スタッフ

目黒 瞳

 連載の最初の方で生姜焼き用豚肉を厚く切っていたお肉屋さんは、クリニックの場所が決まって工事が始まったら、今度はスタッフのことに興味が移ったようです。

 「近くの○×クリニックの受付さん、辞めて家でぶらぶらしているけど、どうかしら?」

第38回 挨拶回りはローコストのPR

目黒 瞳

 医療機関へのご挨拶は、電話番号が決まってからでないと、こちらに紹介してもらう際に困るだろうと思い、電話が通じ内覧会のお知らせができてから行くことにしました。

 さて、どこまで回ろうかと思い、自分のクリニックを中心に半径500mと1kmの円を描いてみました。

第37回 挨拶はケチるな!

目黒 瞳

 ご近所への挨拶は、開業の直前に内覧会の案内を兼ねて回ればいいかなあと思っていたのですが、「建物の工事の際に結構近隣から苦情があったみたい」という気になるうわさを、この物件を紹介してくれた方から聞きました。

第36回 申請は計画的に

目黒 瞳

 診療所の開業で避けては通れないのが、保健所と社会保険事務所への申請です。

 まずは設計図を固める段階で保健所に行きます。内装で最もうるさく言われるのが、区画が異なる部分の仕切り(ドア)です。待合室、診察室、検査室、バックヤードの間は「絶対にドアを」と指導されます。

第35回 人を雇うと決めたなら

目黒 瞳

 院長1人でスタッフなしということもまれにありますが、大抵のクリニックはスタッフを雇うことになるでしょう。雇用に関する届け出などは、社会保険労務士、会計事務所に任せることが多いと思います。私もお任せしましたが、基本的なことは知っておくべきでしょう。書店に並んでいるマニュアル本でいいのですが、社会保険と会計についてそれぞれ読んでおくと、話がつかみやすくなります。

第34回 夢、平常心、愛情

目黒 瞳

 この連載はちょっと過去にさかのぼって書いているところがあるので、内容は項目別にまとめたりしていますが(融資、内装とか)、実際にはすべてが同時に進行しています。それも各々がきちんと流れるように進むのとはほど遠く、それぞれの打ち合わせ、見積もり、検討、相談が混沌と錯綜します。

第33回 誰か、つなげて!

目黒 瞳

 開院に合わせて期日通りに光をつなぐにはLANでなければダメ。ということは分かったので、大家さんに頼んで、とりあえず私の借りるところだけでもLANにしてもらいました。だけど今度は、誰が工事をするのかが分かりません。

第32回 光 始まらず

目黒 瞳

 ひかりを使ったインターネットへの接続をお願いすると、建物にどの方式が入っているかをNTTが住所から確認し、それに合わせて工事予定を組みます。壁もできていないときに工事に来られても困るので、保健所の審査が入るころに工事の予約をしていました。すると、その2日前に電話。

第31回 今どきの電話って…

目黒 瞳

 電話とネットをどういう組み合わせにするか。悩みました。

 昨今は選択肢が多すぎてよく分かりません。電子カルテについては、メーカーによっては推奨のネット環境があります。賃貸するビルには「ひかり」が入ることがわかっていたので、そこから電子カルテを決めました。NTTのBフレッツでネットを、ひかりで2回線(電話とファックス)という結論にしたのですが、これが後でまたもや問題になるのです…。

第30回 希望の内装は醤油風味

目黒 瞳

 空調や床などの内装工事が進んでくると、次は壁紙や家具の具体的な話が出てきます。設計の方がこだわりを見せるところ。…なのですが、使う立場になってみると、見栄えの良さというのはクリニックにはあまり関係ないのでは?と思います。

第29回 女、七人の敵あり

目黒 瞳

 床の現状復帰の問題については結局、「コンクリートははがさなくてよい」という覚え書きを作って一件落着。

 「でも現状復帰が必要になるときには、私もTgさんもよぼよぼで(ほぼ同い年)、きっと覚えていないよ」と、内装の設計を引き受けてくれたTgさんに言ってみたところ、

第28回 図面と違うのに、費用はこっち持ち?

目黒 瞳

 私が契約したのは「スケルトン」と呼ばれる、天井も床も空調も、何もない状態の物件です。この物件の賃貸契約には、「契約を終了するには現状復帰戻し」という条件がついています。つまりは、「全部壊して元に戻せ」ということ。

第27回 部屋に知らない人が!!

目黒 瞳

 水もれトラブルの際、建物側の現場監督が「給排水やお風呂の追い焚き管に問題がないことを確認します」と言って、上階の部屋で水を大量に流したり、お風呂を沸かしたりしていました。既に上階は賃貸の入居者が決まっていて鍵も渡しているはずなのに、「入居する人には連絡したのかなあ?」と思っていたところ、

第26回 天井から水!

目黒 瞳

 朝9時すぎに設計事務所のTgさんから携帯に電話。「先生、トラブル発生です!」。

 内装の天井を吊るために、ドリルで穴を開けていたら水が流れ出てきたというのです。もしかしたら、上の部屋の給排水管に穴を開けてしまったのではないかと、現場では内装担当の工事の人と、建物担当の工事の人がもめている。誰が悪いとか、修復費用は誰が出すのかなどで、喧嘩になりそうという一触即発の状況になっているらしいのです。

第25回 不動産屋がダメダメ…

目黒 瞳

 借りた物件は、ご近所の知り合いから紹介された物件なので、不動産屋で探し当てたわけではありません。しかし大家さんから、契約や連絡には不動産屋を通してほしいと言われ、不動産屋さんを指定されました。そうしたら、このお兄ちゃんが全くのダメダメ。

第24回 まるで画像診断なしの外科手術

目黒 瞳

 業者の選定はともかく、内装を決める際に考える条件は診療科によって違いがあると思います。

 眼科では、視力は明室、診察室は明と暗の双方、眼底カメラおよび視野計は半暗室と、使う機器による照明の違いを考えなければなりません。視力測定のための距離の確保も必要です。手術はしないつもりですが、簡単な処置は必要なので、処置台あるいはベッドも入れます。こういった条件により、大体の設計は決まります。

第23回 内装の“主治医”、ようやく現れる

目黒 瞳

 昔から知っている設計事務所のTgさんに内装を頼めると分かったら、ものすごく肩の荷が下りました。信頼できる主治医にようやく出会えた患者さんと同じような気持ちです。そして、彼はその日のうちに早速、現場へ向かってくれたのでした(これが当然でしょうけれど)。

第22回 談合?

目黒 瞳

 というわけで、X社は最後の切り札に取っておくとして、4社の図を何回か打ち合わせして直しながら、内装の見積もりまで出してもらいました。後から考えるとちょっと信じられないのですが、このうち現場まで見に行ったのは1社だけ。普通、見に行くでしょうー。

第21回 内装見積もりを4社から、さて本命は…?

目黒 瞳

 内装の業者選びですが、いくつか当たりました。
X社:ホームページに出している施工事例のあまりの豪華さに度肝を抜かれつつ、相談に行ってみました。案の定、いわゆるデザイナーズマンションの設計をするような方で、何か違う感じ…。

第20回 家賃は出て行く…。急げ、内装!

目黒 瞳

 建物の外側ができれば内装に取りかかれると最初は思っていたのですが、建物自体、完成した後に消防などの認可を受ける必要があるようです。その後に賃貸契約をして、やっと内装工事が可能になるということでした(だから、建物を施工する業者に、早めに工事できるところはやっておいてほしかったのです)。

第19回 図面と違って、がっかり…

目黒 瞳

 前回まで紹介したように、開業資金の調達はさほど難しいものではありませんでした。なので、このまま順調に開業までこぎつけられると踏んでいたら、そうは行きません。まさか、内装工事でトラブル続出とは…。思いも寄りませんでした。

第18回 お金を借りるのは診療より簡単?

目黒 瞳

 国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)のホームページにある「創業計画書記入例」を見ると、創業の融資を受けたいと考える人はさまざまなようです。それこそ「手作りが好きだから、お店をやる」みたいなレベルの人もお金を借りにやって来るわけです。私たち医師はこれまでの実績がしっかりとある専門職なので、開業についていろいろと聞かれても、胸を張って夢を語りましょう。

第17回 これだけある、融資の提出書類

目黒 瞳

 国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)に提出した書類は、賃貸の重要事項説明書、内装の設計図と見積書、リースの見積書、電子カルテの見積書、通帳。それから、昨年と一昨年の収入を証明するものとして、一昨年の分は確定申告の控え、昨年の分は給与明細(確定申告直前で源泉徴収票もまだ来ていなかったので)です。

第16回 有利に融資を受ける3つのポイント

目黒 瞳

 長くバイトをして貯金が貯まったこともあり、結局、2000万円を自己資金、1000万円を公庫で借りるということにしました。

 一般的にお金を借りるときにもそうだと思うのですが、有利に融資を受けるには次の3点が重要です。

第15回 リース or ローン?

目黒 瞳

 収支の予測とともに大事なのが、支出の実際の見積もりです。これがないことには、融資を受けることはできません。内装、リース、電子カルテなどは見積書の提出、家賃は金額がはっきりと書かれている重要事項説明書(契約のときに交わすもの)の提出を求められます。

第14回 最初の半年は出費ばかり

目黒 瞳

 というわけ(前回参照)で、銀行からの資金調達は却下。「診療所開業マニュアル」(『日経ヘルスケア』編、2018年7月時点で完売)を読み直し、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)のホームページをチェックしました。

 いろいろなパターンや条件がありますが、金利2%くらいで借りられそうです。

第13回 どうする? 開業資金4000万円

目黒 瞳

 今回からは実際の金額がかなり具体的に出てきます。開業を考えている先生たちには非常に興味のあるところだと思うのですが、なんだかあまりに生々しくて…。それが匿名執筆している理由でもあります。

 最初にぼんやりと考えていた開業費用は、

第12回 焦燥の日々

目黒 瞳

探しても探しても開業場所が見つからないとき、「誰も分かってくれない」「寄ってくる業者さんが言うのはウマい話ばかり」と考えていると、電車の中でつい涙が出てきました。泣きながら、「周りが全部敵に見える」と親友にメールしたり(親友びっくり!)、かなり暗い人になってしまいました。

結構、弱虫です。独立開業とは、孤独な作業だと分かってはいたのですが…。

既に開業されて成功している先輩と話しても、その先輩にとっては開業準備の苦労など忘却の彼方の話。挙げ句には

第11回 開業の孤独

目黒 瞳

開業準備までバイト生活なので、こういうときに長期の海外旅行にでも行きたいなあと思ったのですが、母に
 「フリーターなんだから、お金ないでしょ。何をバカなこと言ってるの!」と怒られました。

フリーターではなく、フリーの眼科医です! 後で計算してみてもはっきりしたのですが、実は勤務医だったころよりも年収が多かったバイト生活でした。時給が高いので、そうなるのですが。

第10回 身内の医者も分かってくれない

目黒 瞳

私の親族には医者が多いのですが、みんな勤務医です。開業するということが分かっていません。

「1日に10人も診ればいいんでしょ?」
えーと、眼科の患者1人当たりの点数は、オペしない開業医だと600点くらいです。1日6万円の収入だと、週5日の診療で月収120万円。家賃とスタッフの給料を払ったらおしまいです。器械も買えませんが…。

第9回 マーキング

目黒 瞳

場所が決まったら、ほかの眼科が近くで開業しないか、突然不安になりました。まあ、なかなか物件が出ないエリアで、開業にかかわるいろいろな業種の方たちから「よく見つかりましたね~」と言われるほど。なので大丈夫だろうし、もし手術もする診療所を開設する先生がいても、あまり競合相手にはなりません。とはいえ、ちょっと心配。

第8回 家賃の相場が想定外に上昇

目黒 瞳

開業予定地が結構家賃の高いところだとは知っていました。「万札を敷き詰めるような開業」と業者さんに冗談飛ばされたくらいです(大げさですよね)。
探し始めた1年前、この地域の賃貸料は坪2万円に近づきつつあったので、予算は2万円×20坪=40万円/月と見込んでいました。ところが、

第7回 詰まる所は人の縁

目黒 瞳

前回のごとく、物件は結局、知り合いの紹介で見つかったのでした。不動産屋に出てくる物件だけではダメってことですねえ。ちなみに不動産屋はこちらから連絡しない限り、続けて探すことはしてくれません。最初に行ったときに見つからなければ、全く連絡は来ませんでした。

第6回 物件やっと見つかる。が…。

目黒 瞳

商店街のTさんが「本当は貸したくないらしいんですが、ちょっとお願いしてみました」という物件を探してきてくれました。
築30年近い物件なのですが、立地条件、広さは完璧です。医療機器屋さんと内装デザインの会社の人にも見てもらい、「うん、古いけどなかなかいいねえ」と皆でにっこり。

第5回 ライバル登場!

目黒 瞳

 開業を考えている私の育った町には眼科が2軒ありました。1軒はもうだいぶ前に廃業したのですが(私は子供のころ通ってました)、その近くに何と眼科ができてしまいました。 大ショック!!

第4回 母の貢献?

目黒 瞳

母曰く、「そんなにわがまま言っているから見つからないのよ! どこでもいいから開業して、いいところが見つかったら移ればいいでしょ!!」  いえいえ、それにはお金が必要。内装にはお金が100万円単位でかかります。家賃にしても、入るときに1年分に近い金額を保証金として払い、出る場合には前もっての通告が必要です。

第3回 地元開業の善し悪し

目黒 瞳

見せてもらった物件がいまいちで、しょんぼり歩いているときに猫を発見。かまおうとしたのですが、逃げられてしまい…。 物件の見つからぬ日の街角に 我泣きぬれて猫とたわむる (ひとみ作)

第2回 不動産屋とのすれちがい

目黒 瞳

『20坪、1階もしくはエレベーターのある上階』 が条件なのですが、出てくる物件は10坪という小さいものばかり。もともと小さな商店をビルにすることが多いエリアらしく、面積が小さく、エレベーターがない物件がほとんどです。

第1回 開業場所が見つからない!

目黒 瞳

勤務先の方針がいまひとつ自分の考えと合わないと感じるようになるとともに、わき上がってきたのが「自分1人でやってみたい」という独立願望。 「開業したい」と前職場で言ったところ、「じゃ、今年いっぱいで辞めてね」と返ってきたのは一昨年のこと。