開業奮戦記(目黒 瞳)

「開業のきっかけは?」「開業地域や物件を選ぶポイントは?」「開業資金は?」
「患者は来てくれる?」。理想に向かって診療所開業に踏み切った医師たちが、
日々悩み、悪戦苦闘する様子をリアルにお伝えします。

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

記事一覧

第30回 希望の内装は醤油風味

目黒 瞳

 空調や床などの内装工事が進んでくると、次は壁紙や家具の具体的な話が出てきます。設計の方がこだわりを見せるところ。…なのですが、使う立場になってみると、見栄えの良さというのはクリニックにはあまり関係ないのでは?と思います。

第29回 女、七人の敵あり

目黒 瞳

 床の現状復帰の問題については結局、「コンクリートははがさなくてよい」という覚え書きを作って一件落着。

 「でも現状復帰が必要になるときには、私もTgさんもよぼよぼで(ほぼ同い年)、きっと覚えていないよ」と、内装の設計を引き受けてくれたTgさんに言ってみたところ、

第28回 図面と違うのに、費用はこっち持ち?

目黒 瞳

 私が契約したのは「スケルトン」と呼ばれる、天井も床も空調も、何もない状態の物件です。この物件の賃貸契約には、「契約を終了するには現状復帰戻し」という条件がついています。つまりは、「全部壊して元に戻せ」ということ。

第27回 部屋に知らない人が!!

目黒 瞳

 水もれトラブルの際、建物側の現場監督が「給排水やお風呂の追い焚き管に問題がないことを確認します」と言って、上階の部屋で水を大量に流したり、お風呂を沸かしたりしていました。既に上階は賃貸の入居者が決まっていて鍵も渡しているはずなのに、「入居する人には連絡したのかなあ?」と思っていたところ、

第26回 天井から水!

目黒 瞳

 朝9時すぎに設計事務所のTgさんから携帯に電話。「先生、トラブル発生です!」。

 内装の天井を吊るために、ドリルで穴を開けていたら水が流れ出てきたというのです。もしかしたら、上の部屋の給排水管に穴を開けてしまったのではないかと、現場では内装担当の工事の人と、建物担当の工事の人がもめている。誰が悪いとか、修復費用は誰が出すのかなどで、喧嘩になりそうという一触即発の状況になっているらしいのです。

第25回 不動産屋がダメダメ…

目黒 瞳

 借りた物件は、ご近所の知り合いから紹介された物件なので、不動産屋で探し当てたわけではありません。しかし大家さんから、契約や連絡には不動産屋を通してほしいと言われ、不動産屋さんを指定されました。そうしたら、このお兄ちゃんが全くのダメダメ。

第24回 まるで画像診断なしの外科手術

目黒 瞳

 業者の選定はともかく、内装を決める際に考える条件は診療科によって違いがあると思います。

 眼科では、視力は明室、診察室は明と暗の双方、眼底カメラおよび視野計は半暗室と、使う機器による照明の違いを考えなければなりません。視力測定のための距離の確保も必要です。手術はしないつもりですが、簡単な処置は必要なので、処置台あるいはベッドも入れます。こういった条件により、大体の設計は決まります。

第23回 内装の“主治医”、ようやく現れる

目黒 瞳

 昔から知っている設計事務所のTgさんに内装を頼めると分かったら、ものすごく肩の荷が下りました。信頼できる主治医にようやく出会えた患者さんと同じような気持ちです。そして、彼はその日のうちに早速、現場へ向かってくれたのでした(これが当然でしょうけれど)。

第22回 談合?

目黒 瞳

 というわけで、X社は最後の切り札に取っておくとして、4社の図を何回か打ち合わせして直しながら、内装の見積もりまで出してもらいました。後から考えるとちょっと信じられないのですが、このうち現場まで見に行ったのは1社だけ。普通、見に行くでしょうー。

第21回 内装見積もりを4社から、さて本命は…?

目黒 瞳

 内装の業者選びですが、いくつか当たりました。
X社:ホームページに出している施工事例のあまりの豪華さに度肝を抜かれつつ、相談に行ってみました。案の定、いわゆるデザイナーズマンションの設計をするような方で、何か違う感じ…。

第20回 家賃は出て行く…。急げ、内装!

目黒 瞳

 建物の外側ができれば内装に取りかかれると最初は思っていたのですが、建物自体、完成した後に消防などの認可を受ける必要があるようです。その後に賃貸契約をして、やっと内装工事が可能になるということでした(だから、建物を施工する業者に、早めに工事できるところはやっておいてほしかったのです)。

第19回 図面と違って、がっかり…

目黒 瞳

 前回まで紹介したように、開業資金の調達はさほど難しいものではありませんでした。なので、このまま順調に開業までこぎつけられると踏んでいたら、そうは行きません。まさか、内装工事でトラブル続出とは…。思いも寄りませんでした。

第18回 お金を借りるのは診療より簡単?

目黒 瞳

 国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)のホームページにある「創業計画書記入例」を見ると、創業の融資を受けたいと考える人はさまざまなようです。それこそ「手作りが好きだから、お店をやる」みたいなレベルの人もお金を借りにやって来るわけです。私たち医師はこれまでの実績がしっかりとある専門職なので、開業についていろいろと聞かれても、胸を張って夢を語りましょう。

第17回 これだけある、融資の提出書類

目黒 瞳

 国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)に提出した書類は、賃貸の重要事項説明書、内装の設計図と見積書、リースの見積書、電子カルテの見積書、通帳。それから、昨年と一昨年の収入を証明するものとして、一昨年の分は確定申告の控え、昨年の分は給与明細(確定申告直前で源泉徴収票もまだ来ていなかったので)です。

第16回 有利に融資を受ける3つのポイント

目黒 瞳

 長くバイトをして貯金が貯まったこともあり、結局、2000万円を自己資金、1000万円を公庫で借りるということにしました。

 一般的にお金を借りるときにもそうだと思うのですが、有利に融資を受けるには次の3点が重要です。

第15回 リース or ローン?

目黒 瞳

 収支の予測とともに大事なのが、支出の実際の見積もりです。これがないことには、融資を受けることはできません。内装、リース、電子カルテなどは見積書の提出、家賃は金額がはっきりと書かれている重要事項説明書(契約のときに交わすもの)の提出を求められます。

第14回 最初の半年は出費ばかり

目黒 瞳

 というわけ(前回参照)で、銀行からの資金調達は却下。「診療所開業マニュアル」(『日経ヘルスケア』編、2018年7月時点で完売)を読み直し、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)のホームページをチェックしました。

 いろいろなパターンや条件がありますが、金利2%くらいで借りられそうです。

第13回 どうする? 開業資金4000万円

目黒 瞳

 今回からは実際の金額がかなり具体的に出てきます。開業を考えている先生たちには非常に興味のあるところだと思うのですが、なんだかあまりに生々しくて…。それが匿名執筆している理由でもあります。

 最初にぼんやりと考えていた開業費用は、

第12回 焦燥の日々

目黒 瞳

探しても探しても開業場所が見つからないとき、「誰も分かってくれない」「寄ってくる業者さんが言うのはウマい話ばかり」と考えていると、電車の中でつい涙が出てきました。泣きながら、「周りが全部敵に見える」と親友にメールしたり(親友びっくり!)、かなり暗い人になってしまいました。

結構、弱虫です。独立開業とは、孤独な作業だと分かってはいたのですが…。

既に開業されて成功している先輩と話しても、その先輩にとっては開業準備の苦労など忘却の彼方の話。挙げ句には

第11回 開業の孤独

目黒 瞳

開業準備までバイト生活なので、こういうときに長期の海外旅行にでも行きたいなあと思ったのですが、母に
 「フリーターなんだから、お金ないでしょ。何をバカなこと言ってるの!」と怒られました。

フリーターではなく、フリーの眼科医です! 後で計算してみてもはっきりしたのですが、実は勤務医だったころよりも年収が多かったバイト生活でした。時給が高いので、そうなるのですが。

第10回 身内の医者も分かってくれない

目黒 瞳

私の親族には医者が多いのですが、みんな勤務医です。開業するということが分かっていません。

「1日に10人も診ればいいんでしょ?」
えーと、眼科の患者1人当たりの点数は、オペしない開業医だと600点くらいです。1日6万円の収入だと、週5日の診療で月収120万円。家賃とスタッフの給料を払ったらおしまいです。器械も買えませんが…。

第9回 マーキング

目黒 瞳

場所が決まったら、ほかの眼科が近くで開業しないか、突然不安になりました。まあ、なかなか物件が出ないエリアで、開業にかかわるいろいろな業種の方たちから「よく見つかりましたね~」と言われるほど。なので大丈夫だろうし、もし手術もする診療所を開設する先生がいても、あまり競合相手にはなりません。とはいえ、ちょっと心配。

第8回 家賃の相場が想定外に上昇

目黒 瞳

開業予定地が結構家賃の高いところだとは知っていました。「万札を敷き詰めるような開業」と業者さんに冗談飛ばされたくらいです(大げさですよね)。
探し始めた1年前、この地域の賃貸料は坪2万円に近づきつつあったので、予算は2万円×20坪=40万円/月と見込んでいました。ところが、

第7回 詰まる所は人の縁

目黒 瞳

前回のごとく、物件は結局、知り合いの紹介で見つかったのでした。不動産屋に出てくる物件だけではダメってことですねえ。ちなみに不動産屋はこちらから連絡しない限り、続けて探すことはしてくれません。最初に行ったときに見つからなければ、全く連絡は来ませんでした。

第6回 物件やっと見つかる。が…。

目黒 瞳

商店街のTさんが「本当は貸したくないらしいんですが、ちょっとお願いしてみました」という物件を探してきてくれました。
築30年近い物件なのですが、立地条件、広さは完璧です。医療機器屋さんと内装デザインの会社の人にも見てもらい、「うん、古いけどなかなかいいねえ」と皆でにっこり。

第5回 ライバル登場!

目黒 瞳

 開業を考えている私の育った町には眼科が2軒ありました。1軒はもうだいぶ前に廃業したのですが(私は子供のころ通ってました)、その近くに何と眼科ができてしまいました。 大ショック!!

第4回 母の貢献?

目黒 瞳

母曰く、「そんなにわがまま言っているから見つからないのよ! どこでもいいから開業して、いいところが見つかったら移ればいいでしょ!!」  いえいえ、それにはお金が必要。内装にはお金が100万円単位でかかります。家賃にしても、入るときに1年分に近い金額を保証金として払い、出る場合には前もっての通告が必要です。

第3回 地元開業の善し悪し

目黒 瞳

見せてもらった物件がいまいちで、しょんぼり歩いているときに猫を発見。かまおうとしたのですが、逃げられてしまい…。 物件の見つからぬ日の街角に 我泣きぬれて猫とたわむる (ひとみ作)

第2回 不動産屋とのすれちがい

目黒 瞳

『20坪、1階もしくはエレベーターのある上階』 が条件なのですが、出てくる物件は10坪という小さいものばかり。もともと小さな商店をビルにすることが多いエリアらしく、面積が小さく、エレベーターがない物件がほとんどです。

第1回 開業場所が見つからない!

目黒 瞳

勤務先の方針がいまひとつ自分の考えと合わないと感じるようになるとともに、わき上がってきたのが「自分1人でやってみたい」という独立願望。 「開業したい」と前職場で言ったところ、「じゃ、今年いっぱいで辞めてね」と返ってきたのは一昨年のこと。