開業奮戦記(目黒 瞳)

「開業のきっかけは?」「開業地域や物件を選ぶポイントは?」「開業資金は?」
「患者は来てくれる?」。理想に向かって診療所開業に踏み切った医師たちが、
日々悩み、悪戦苦闘する様子をリアルにお伝えします。

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

第60回 つらい日々の中でも

2018/11/30 目黒 瞳
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 「医者っていうだけで、すごいと思うような人たちが相手なのよ。あんたがいくら専門とか言ったって、みんな分かりゃしないんだから。『理想の医療』なんて言ってないで、どんどん検査して薬出して、もうけを出さなきゃ、つぶれるわよ」。患者さんが増えない状況を母に責められます。

 いや、それでは何のために開業したのかということになってしまいます。利益至上主義のところで働いたことはないのですが、それでも、「検査・処方はなるべく行い、次回の再診も必ず患者に指示すること」と、売り上げアップの指示を受けることがあり、自分のスタンスと違う外来を強いられるのは苦痛でした。

 「必要最低限の検査と処方で診療したい」。この理想は譲れません。

 バイトも含めてこれまでの勤務先では、私の説明に納得が行かない患者さんに唾を吐かれたこと、希望した薬を出さなかったので「このヤブ!」と吐き捨てられたこと、「(クリニックの)昼休みに診察してくれない」と苦情を言われたこと、支払いを拒否されたこと…など、理不尽な経験をいろいろしてきました。

 しかし、生まれ育った地元で開業すると、患者さんはとてもおっとりしていて、理不尽なクレームはもちろんないし、説明すれば分かってくれる方ばかり。「これが普通だったのか」と思う日々です。

 子どものころから知り合いの商店街の方たちも、「瞳ちゃんが、お医者さんになって、勉強して戻ってきてくれた」と、尊敬の念を持って接してくれ、私の説明はプロの意見として聞き入れてくれます。患者さんが増えないのはつらい日々なのですが、外来がとっても楽しみになったのも事実です。

開業後の現在から「この時」を振り返って

10年後にこの文章読みなおしてみると、かなり無理して強がり言ってるな、と思います。10年後は決してものすごく儲かるような眼科にはなっていませんが、希望通りの診療はできているよ、とこの時の自分に教えてあげたい。そして今も検査は少ない眼科のままです。先日見学に来た後輩は「麦粒腫で来ても本当に眼圧も測らないんですねえ」とびっくりしていました。

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連載の紹介

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

著者プロフィール

目黒 瞳(めぐろ ひとみ)氏

●生まれ育った地元で、2008年、眼科を開業。
 なかなか増えない患者数に不安になりつつ、後進のためになる話を記録に残そうと本連載を執筆。