開業奮戦記(目黒 瞳)

「開業のきっかけは?」「開業地域や物件を選ぶポイントは?」「開業資金は?」
「患者は来てくれる?」。理想に向かって診療所開業に踏み切った医師たちが、
日々悩み、悪戦苦闘する様子をリアルにお伝えします。

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

第44回 あなどれない紙カルテの力

2018/10/19 目黒 瞳
Facebookでシェア ツイート

 眼科はカルテに絵が多いので、「電子カルテは無理では?」と言われることがあります。しかし、絵はペンで入力できるし、視力、眼圧、視野も眼底写真も全部取り込むことができます。ただ、「できる」ということと、使いやすさは別問題です。

 都心のクリニックではカルテの保存場所が悩みの種なので、完全ペーパーレスが可能で、カルテ保存のスペースがいらないとなれば、設計は楽になります。

 しかし、ペーパーレスのクリニックでバイトしてみて分かったことですが、紙カルテには非常に優れた点があります。「紙カルテには行間の力がある」という話を聞いたことがありますが、電子カルテには、前回の診察時の「ここは要注意!」というニュアンスが出にくいのです。

 また、パラパラと紙をめくっていると、時間的な経過が非常に分かりやすいのですが、電子カルテは往々にしてその日の所見を書き込むだけになってしまいます。その日限りの来院というドックのような診療には力を発揮するかもしれません。

 しかし、例えば子どもが結膜炎で眼科に来た場合、カルテをさかのぼって見てみたら「視力を測ったけれどもうまくできなかった」という記載があれば、「次回、結膜炎が治ったころに視力を測りましょう」と話すことができます。

 電子カルテでは、これまでの受診日に何をしたのか、すべてを画面に出して見ることは少ないと思います。眼鏡処方をする場合にも、いくつかのパターンで眼鏡をかけてもらって試しますが、その記載を電子カルテに入力すると、時間がかかる割にニュアンスは伝わりにくくなります。また、電子カルテには次回の検査の指示が分かりにくいという弱点もあります。

 以上まとめると、項目別の解析が得意なのが電子カルテ、個人のデータを総合的に見やすいのが紙カルテというイメージです。結局、私は併用することにしました。

開業後の現在から「この時」を振り返って

当院はそれほど患者数が多くないため(悲しい…)、紙カルテの保管場所に悩むことはありませんでした。5年来院のない患者さんを廃棄していくと、だいたいいつも同じ量のカルテです。中には紙カルテ保存のために何個も物置を購入しているクリニックもあるそうですので、どう考えるかはいろいろでしょう。
先輩の眼科ではコンタクトレンズの患者さんカルテだけスキャンして電子保存、通常の診療カルテは紙カルテとし、オーダー(病名、検査、処方など)入力は電子カルテ、という併用をしているところもあります。コンタクトの患者さんはカルテも増えますし、内容はほとんど定型なので、こういう方法もありだと思います。


近年開業する先生の8割が入れるという電子カルテカテゴリはこちら
電子カルテと連動するシステム、ICTはこちら

連載の紹介

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

著者プロフィール

目黒 瞳(めぐろ ひとみ)氏

●生まれ育った地元で、2008年、眼科を開業。
 なかなか増えない患者数に不安になりつつ、後進のためになる話を記録に残そうと本連載を執筆。