開業奮戦記(目黒 瞳)

「開業のきっかけは?」「開業地域や物件を選ぶポイントは?」「開業資金は?」
「患者は来てくれる?」。理想に向かって診療所開業に踏み切った医師たちが、
日々悩み、悪戦苦闘する様子をリアルにお伝えします。

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

第12回 焦燥の日々

2018/07/24 目黒 瞳
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 探しても探しても開業場所が見つからないとき、「誰も分かってくれない」「寄ってくる業者さんが言うのはウマい話ばかり」と考えていると、電車の中でつい涙が出てきました。泣きながら、「周りが全部敵に見える」と親友にメールしたり(親友びっくり!)、かなり暗い人になってしまいました。

 結構、弱虫です。独立開業とは、孤独な作業だと分かってはいたのですが…。

 既に開業されて成功している先輩と話しても、その先輩にとっては開業準備の苦労など忘却の彼方の話。挙げ句には
 「開業するとね。スタッフのボーナス査定とか、社会保険の金額とか、退職金の心配とか、もう大変よ~」
 それ、今言われても全然うれしくないです。親心というやつなのかもしれませんが…。できれば夢を語る先輩でいてほしい。お金もうけの話だけじゃなく。

 勤務医や、医療関係ではない知り合いは、皆そろって
 「今は大変でも、開業すれば楽でもうかるからいいでしょ!」
 本当にもうかるのかしら…?

 ものすごく不安になり、「うまく行かなかったらどうしよう」という焦燥感だけが募って苦しかったときに、親友から聞かれました。
 「最悪の状況って、どんなこと?」
 「借金が返せないうちに廃業すること」
 「それで失うものは?」
 「お金と担保に入れた不動産」
と、答えて分かりました。たとえ経営のプロにはなれなくて失敗したとしても、医者としてはプロのままなんだと。そう考えると、あまり恐いものはなくなりますね。

 そして、ず~っと先にある自分の目標をイメージしていることが大事。開業は手段であって、目的ではないと私は考えています。私の目標は、「Simple & Minimumで、Bestの医療を行うこと」「誰もが当たり前と思っていることをサイエンスとして追求すること」。そして、その過程で得たことを「ほかの人に伝えること」です。この連載を書いているのも、「自分の苦労や失敗が後輩の役に立てば…」という気持ちからなのです。

開業後の現在から「この時」を振り返って

幸福がどういうことかは人それぞれの思いがありますが、私にとって幸福のひとつの要素となるのは貢献度です。どれだけ人の役に立てたか、ということが喜びにつながります。そして「決めるのは自分」ということも大事です。自分自身でコントロールできる人生を送りたいのです。(あとは美味しいものを気心のしれた仲間と食べること!)
なので、開業について後輩にアドバイスしても、最終的に決めるのは本人だと思ってます。


誰にも相談できない開業の悩みはここで解決

連載の紹介

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

著者プロフィール

目黒 瞳(めぐろ ひとみ)氏

●生まれ育った地元で、2008年、眼科を開業。
 なかなか増えない患者数に不安になりつつ、後進のためになる話を記録に残そうと本連載を執筆。