開業奮戦記(目黒 瞳)

「開業のきっかけは?」「開業地域や物件を選ぶポイントは?」「開業資金は?」
「患者は来てくれる?」。理想に向かって診療所開業に踏み切った医師たちが、
日々悩み、悪戦苦闘する様子をリアルにお伝えします。

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

第11回 開業の孤独

2018/07/24 目黒 瞳
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 開業準備までバイト生活なので、こういうときに長期の海外旅行にでも行きたいなあと思ったのですが、母に  「フリーターなんだから、お金ないでしょ。何をバカなこと言ってるの!」と怒られました。

 フリーターではなく、フリーの眼科医です! 後で計算してみてもはっきりしたのですが、実は勤務医だったころよりも年収が多かったバイト生活でした。時給が高いので、そうなるのですが。

 学会で会った後輩に言われたのは、
 「バイトばかりで、暇で楽でもうかって、楽しい時期ですよねえ」
という一言。開業場所も見つかっていないときだったので、本当に腹立たしく、グーで殴りそうになりました。

 場所探し、融資をどう受けるか、内装はどこに頼むのか、役所への届け出…とか、考えなければならないことは多いのですが、マニュアルらしいマニュアルはありません。業者さん(製薬会社、医療機器メーカー、電子カルテの会社などなど)も、すべての事情を把握しているわけではなく、話をしていると「?」と思うことも多いのが実際です(なので、コーディネーターを頼む気にはなれなかったのです)。

 一番参考になったのは、日経ヘルスケアが出している「診療所開業マニュアル」(2018年7月時点で完売)と、参天製薬に頼むともらえる「これからの開業」です。ただし、どういう開業にしたいのかという希望を一番よく分かっているのは自分なので、すべてがマニュアル通りにいくわけではありません。費用に関しても、地域によって家賃は大きく差があるので、自ら調査する必要があります。

 こういった事情を一番分かってくれたのは、実は美容師さんでした。「いずれは独立開業したい」と考えている人なので、場所探し、保健所への届け出、予算や融資の話まで、大いに盛り上がりました。

開業後の現在から「この時」を振り返って

現在はこのときとちがう美容師さんですが、彼が独立する前から担当してもらっていたので、やはり開業よもやま話が通じて良い気晴らしになりました。読み直してみると、私が殴りたくなった後輩はきっとお金が一番大事な人なんだろうと感じます。仕事のやりがいはまた別物なのです。
眼科に限らず開業したい、という人の相談を個人的に受けてますが、きっと「誰かの役に立ちたい」という気持ちが強いのでしょう。最近は常連となったフレンチビストロのシェフが移転を希望していて、物件探しに同行したりしています。
開業スケジュールはこちらのサイトにも載っていますので参考になりますね。


連載の紹介

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

著者プロフィール

目黒 瞳(めぐろ ひとみ)氏

●生まれ育った地元で、2008年、眼科を開業。
 なかなか増えない患者数に不安になりつつ、後進のためになる話を記録に残そうと本連載を執筆。