開業奮戦記(目黒 瞳)

「開業のきっかけは?」「開業地域や物件を選ぶポイントは?」「開業資金は?」
「患者は来てくれる?」。理想に向かって診療所開業に踏み切った医師たちが、
日々悩み、悪戦苦闘する様子をリアルにお伝えします。

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

第10回 身内の医者も分かってくれない

2018/07/24 目黒 瞳
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 私の親族には医者が多いのですが、みんな勤務医です。開業するということが分かっていません。

 「1日に10人も診ればいいんでしょ?」
 えーと、眼科の患者1人当たりの点数は、オペしない開業医だと600点くらいです。1日6万円の収入だと、週5日の診療で月収120万円。家賃とスタッフの給料を払ったらおしまいです。器械も買えませんが…。

 「受付は地元の主婦にパートで半日くらい来てもらえばいいでしょ? 眼科なんて、結膜炎くらいしか来ないし、ちょっと診て、目洗って、点眼出しておしまいだし」
 …。いったい、いつの時代の眼科だ?? それに、開業医って、受付スタッフが「肝」なんですよ。

 「眼科の器械って10万円くらい?」
 手術しない眼科でも、必要な器械は新品の場合、2000万円ほどかかります。

 「オペもしない眼科なら、よそにどんどん紹介するんでしょ? うちの大学の眼科の関連病院が近くにあるから、そこに送ってよ」
  眼科は小さい臓器ですが、専門は分かれています。市中病院クラスの眼科だと、何か特化したものがないと、お願いできる疾患はほとんどありません。

 医療関係でない知り合いからは
 「身内にお医者さんが多いから、いろいろ助けてもらえていいわねえ」 と言われ、周りの勝手な思い込みに腹を立てながらも、「何だか、どっかで同じような話があったような…」という既視感。気付いたのが、マンガ「動物のお医者さん」です。

 主人公・ハムテルは、「開業すれば安く診てもらえる」「診察券のデザインはこんな感じに」「眼鏡をかけた方が院長らしい」とか言われてました。今の自分の状況はすごく似ているなあと思い、なぜか気が晴れたのでした。

開業後の現在から「この時」を振り返って

開業の経営について一番わかっているのは開業の先輩ドクターたちです。どうすれば患者さんが増えるのかの秘訣はないようですが…。そして今自分の連載を読み直してみると、これが意外に役立つのです。日記のようなものでも残しておくと良いのですね。
開業したいというドクターたちから科を問わず個人的に相談を受けることがよくあります。私の過去の連載を知っているからではなく、私が率直に隠さず話すと思っているからのようですが、実情を知って開業をあきらめた人もいます(時間的に楽で儲かると思っている人が多いのです。)。そして最近眼科の後輩から相談を受けています。彼女がどのような開業をするのか新連載のほうでお伝えできるかと思いますので、ご期待ください。


連載の紹介

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

著者プロフィール

目黒 瞳(めぐろ ひとみ)氏

●生まれ育った地元で、2008年、眼科を開業。
 なかなか増えない患者数に不安になりつつ、後進のためになる話を記録に残そうと本連載を執筆。