開業奮戦記(目黒 瞳)

「開業のきっかけは?」「開業地域や物件を選ぶポイントは?」「開業資金は?」
「患者は来てくれる?」。理想に向かって診療所開業に踏み切った医師たちが、
日々悩み、悪戦苦闘する様子をリアルにお伝えします。

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

第9回 マーキング

2018/07/05 目黒 瞳
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 場所が決まったら、ほかの眼科が近くで開業しないか、突然不安になりました。まあ、なかなか物件が出ないエリアで、開業にかかわるいろいろな業種の方たちから「よく見つかりましたね~」と言われるほど。なので大丈夫だろうし、もし手術もする診療所を開設する先生がいても、あまり競合相手にはなりません。とはいえ、ちょっと心配。

 先客がいることをマーキングしようと、「『眼科診療所予定』という看板を建築中の現場につけてもいいですか?」と大家さんに聞いたら、「本契約してください」と。まあ、当たり前か…。でも本契約となると、近くで開業する人が万が一出てきて撤退するとなった場合には戻ってこないお金が出てしまいます(借りるところを出るには、「○カ月前には申し出ること」という約束があります)。

 だったら、医師会に入っておけば、近くで開業しようとするドクターが医師会に問い合わせたときに、「ここに眼科あり」って分かるかなあと考えて問い合わせたところ、
 「開業医の先生は開設届け(開業時に保健所に提出する書類)がないと、入会できません」
 そ、そうですか…。まあ、そうだろうな。お金払えばいいってわけじゃないんですね。

 じゃあ、「MRさんだ」と。参天製薬さんにまたお願い。
 「ほかのドクターから開業場所の相談を受けたら、ここには私が開業するって伝えてくださいな」
 「もちろんご協力しますが、うちに全くお声をかけずに開業される先生もいらっしゃいますし…」
 そりゃあ、そうですよねえ。

 というわけで、一番活躍してくれたのは、またまた地元商店街の人たちのうわさ話ネットワーク。最初は「眼科ができるそうよ」。場所が決まってからは「ほら、あそこのお店がたたんだ後に」。開業時期が決まってからは「○月に始めるから、急ぎじゃなかったらよそに行かないで待っててね」という情報を、お買い物に来た古くからのお客さんたちに広報してくれたのでした。

開業後の現在から「この時」を振り返って

買い物途中に「内科開業予定地」と2年後の西暦を書いてある看板を見つけました。そうかあ、この広い土地を購入したのねえ、と思いましたが、自分のものにしないと看板が出せないので(資金があれば)土地も買いたいところですよねえ。(資金があれば!)
そして医療ビルになるらしい、と患者さんに教えてもらった近くの新築物件は、この家賃でクリニックは無理では、と思ったとおり、スポーツトレーニング施設と保育園になっていました。噂はあてになりません。開業する側から言わせてもらえば、(全員が入会するとは限らないものの)こういう時こそ医師会が情報入手できていれば、と思うのですが、過去記事にもあるように開業後に入会しないと医療施設は存在しない扱いになってますので、無理なようです。


連載の紹介

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

著者プロフィール

目黒 瞳(めぐろ ひとみ)氏

●生まれ育った地元で、2008年、眼科を開業。
 なかなか増えない患者数に不安になりつつ、後進のためになる話を記録に残そうと本連載を執筆。