開業奮戦記(目黒 瞳)

「開業のきっかけは?」「開業地域や物件を選ぶポイントは?」「開業資金は?」
「患者は来てくれる?」。理想に向かって診療所開業に踏み切った医師たちが、
日々悩み、悪戦苦闘する様子をリアルにお伝えします。

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

第5回 ライバル登場!

2018/06/21 目黒 瞳
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 開業を考えている私の育った町には眼科が2軒ありました。1軒はもうだいぶ前に廃業したのですが(私は子供のころ通ってました)、その近くに何と眼科ができてしまいました。 大ショック!!

 内覧会が開かれるということで、ご近所の住民(まあ、本当のことですし)として行ってきました。ですが、そこでする質問が
 「コンタクトレンズの種類はどれくらいありますか?」
 「白内障の手術が必要な場合、どこにご紹介されますか?」
と、同業者としか思えないものを連発。院長先生は「??」というお顔をされていました。この辺りの出身の先生ではないようでした。

 そんなある日、実家近くのスポーツジムにてマシーントレーニングに励んでいると、
 「あのー、Iさんのお知り合いの眼科の先生ですよね?」と話しかけられ、びっくり。Iさんとは、私が子供のころに絵を習っていた人です。

 「眼科のH先生が辞められるそうですよ。『その後を借りられないか聞いてみたら?』とIさんからの伝言です」と、さらにびっくりの情報。ジムでそういう情報をもらうことも驚きなのではありますが。

 いろいろと集まってきた噂を総合すると、のんびりやっていたH先生ですが、新しくできた眼科を実際に見て、機器のあまりの進歩ぶりに驚き、辞める決意をしたとのこと。あっという間に閉院してしまいました。後を誰かに継いでもらうなんて、夢にも思っていなかったようで、Iさんが(私のことを)紹介しても、つれない返事だったようです。
 ところが、多くの患者さんが私のことや家族のことを知っていることに驚いて(ご近所さんって、子供たちの学校とか就職先をよく知っているんですね)、「とりあえず中を見にいらしてください」と呼んでいただいたという次第。

 実際に伺ってみると、15坪あるかないかのとても狭い物件で、ちょっとどうかなあという感じ。ほかの良さそうな物件がちょうど見つかったこともあり、とりあえず引き継ぐ話はなくなりました。ただ残念だったのは、H先生のところにあった視野計。熱い視線を注いだのですが、もうお嫁入り先は決まってました。

開業後の現在から「この時」を振り返って

H先生はご自分のビルで開業されていたのですが、閉院後はビル自体を売却されて老人ホームに入られたそうです。それほど患者数が多い眼科ではなく、のんびり診療されていたのはビルにある部屋からの賃貸料が入っていたからなのねえ、とわかりましたが、不動産収入もなく、クリニックの家賃が出ていくばかりの私は焦らなくてはならないようです。それにしても私の親世代のH先生と私の区別がつかなくて、「クリニックの場所を移されたんですね」と何人かの患者さんに言われたのはショックです…。


連載の紹介

※本連載は、過去(2008年1月~2009年9月)に「日経メディカル Online」内で掲載したものを、開業後10年を経た著者が一部加筆・修正、当時を思い出しながらの現在の感想を追記したものです。
一部、現在の状況と異なる点が含まれる場合もございますが、掲載当時の読み物としてご一読ください。

著者プロフィール

目黒 瞳(めぐろ ひとみ)氏

●生まれ育った地元で、2008年、眼科を開業。
 なかなか増えない患者数に不安になりつつ、後進のためになる話を記録に残そうと本連載を執筆。